【外伝】羽根のない人「エンナの呼応石」

現在『カクヨム』で連載中の自作小説『羽のない人』の外伝となります。

>>『羽根のない人』の本編はこちらから

イラストは以前描いていただいたものですが、主人公・エンナ(真ん中)がいつも身につけている二つの呼応石にまつわる話になります。

本編でもキーアイテムとなった呼応石のペンダントは義姉から貰った物でした。

エンナの呼応石

ずっと誰かと繋がることを恐れてきた。

物心ついた頃から、俺はみんなと少し違うのだと、言葉にはならない感覚があった。この感覚が、主観でしか世界を見られない子供特有のおごりであればと何度も思ったが、年を重ねるにつれてそれは確信へと変わっていった。

『俺は姉さんのほんとの家族じゃないよね……?』

上手く言葉を選べなかったあのときの自分を、未だに何度も思い出しては悔いる。

姉さんの愛情を感じていなかったわけではない。でも、無垢の愛情を注がれれば注がれるほど、俺はそれに値する器ではないことを知らされる気がしていた。

そんな俺の苦しみを知った上で、それでもずっと姉弟として接してくれる姉さんの存在は、救いであると同時に少しだけ重荷でもあった。

『エンナ。いつかこれを渡せる仲間を見つけなさい』

ある日、姉さんがそう言って首にかけてくれたのは、二つの呼応石をあしらったペンダントだった。その言葉の通り、呼応石は着脱可能なように銀細工が施されている。

女王である姉さんが仕事の合間を見つけて工房に籠もっていたのは俺も知っていたから、嬉しさよりもよりも先に申し訳なさが立った。

なにより、俺が誰かに呼応石を預ける日が来るなど想像すらできなかった。

あのときの姉さんの寂しげな微笑みが、ずっと忘れられない。きっと、自分では俺のそういう拠り所にはなれないことを感じての表情だった。

——こんなにも感謝しているのに、姉さんにはちっとも伝えられない。

いつか、この呼応石を預けられる仲間ができたら、姉さんも喜んでくれるだろうか。想像すら難しいそんな未来に、あのとき初めて手を伸ばそうと思ったのかもしれない。

風に頬を撫でられて、記憶の底から引き戻される。

目を開けると、眼前に大空が広がった。国の外縁に立っていた。

隣には鞍で武装したアイオンがいる。狼獣特有の三日月の瞳は、遙かなる空を見据えている。その瞳がこちらを見て、心が通じた。

俺は胸元の呼応石を二つ一緒に握りしめ、魔力を込めた。掌を開くと、零れたアースブルーの光が俺たちを優しく包んでくれた。

——いつか、きっと。

そんな想いを胸に、勢いよくアイオンの背に飛び乗った。

アイオンが勢いよく飛び出した大空はどこまでも自由で、だからこそ、この身の在り方を強く問われているような気になった。

【完】

>>『羽根のない人』の本編はこちらから

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
の項目は必須項目となります。