【外伝】ハロー・ワールド「ノエルとシャロンの邂逅①」

現在『カクヨム』で連載中の自作小説『ハロー・ワールド』の外伝となります。

>>『ハロー・ワールド』の本編はこちら

主人公のヒト族・ノエルと、その従者の鬼族・シャロンの出会いを書きました。
本編ではノエルとシャロンは同じくらいの外見年齢ですが、鬼族は極めて長命ですので、出会った時点ではノエルが子供、シャロンは十代半ば(くらいの外見)という構図になっています。

本編ではノエルの方が年上っぽい雰囲気ですが、この時点ではシャロンがお姉ちゃんしてますね。

【外伝】ハロー・ワールド「ノエルとシャロンの邂逅①」

シャンディが連れてきたのはヒト族の子供だった。

ヒト族特有の黒い髪と瞳が印象的で、シャロンは珍しく他者に興味を抱いた。珍しい種族ということもあるが、自分の胸元くらいしか身長のない子供が纏うに不釣り合いな雰囲気が感じられて、それが妙に気になったのだ。

シャンディはというと、仲良くしてやってくれとだけ言い捨てて部屋を出て行ってしまった。ちなみに、絶対に手を触れるなと厳命を受けている。言われなくても、シャロンにそんなつもりは一切なかったのだが。

「……」

「……」

その子供は何も話さなかった。

シャロンも大概口数の少ない方だったが、この子供はそれ以上だ。

無口というよりは、感情が希薄すぎる。連れてきたシャンディが去ったときも、安心や不安といった感情を微塵も表に出さなかった。ただただ虚のように立ち尽くした。

放っておくといつまでもそうしていそうだったので、シャロンはソファに腰掛けるよう促した。子供がのろのろとそれに従ったとき、シャロンは珍しく安堵の吐息を零している。

(……普段の私も、こんなふうに見られているのでしょうか)

感情表現に乏しすぎるとよく言われるシャロンは少し不安になったが、ふかふかのソファに背中も預けず、ちょこんと座っている子供を見るに、自分はここまで酷くないと思った。

「私はシャロンといいます。あなたは?」

不思議と、この子供との沈黙は嫌じゃなかったが、見ず知らずの二人が同じ部屋でいつまでも黙りこくっているのもおかしな話なので、シャロンは尋ねた。少年のソファとは別の椅子にきちりと腰掛けて尋ねながら、進んで他人に声を掛けたのは久しぶりだと思った。

「……ノエル、です」

ぼそりと少年が応えた。

「ではノエル、貴方はどうしてここに来たのですか? 鬼族の王城など、本来ヒト族の訪れる場所ではありません」

「あの人が、“友達になろう”と言って、それで俺を連れてきた……きました」

「あの人というのは兄さんですね。……また気まぐれを起こしたのでしょうか」

シャンディの奔放ぶりは今に始まったことではない。最強種の王のくせに、その自覚を微塵も表に出そうとしないのだ。

ただ、ほんとうは兄が種族のためにいろいろと苦心していることをシャロンは知っていた。だから、この少年にも何かあるのかと思ったのだが、もしかしたらただの気まぐれの可能性もある。

「シャロン……さんは、あの人の妹、ですか?」

「そうですよ。あと、無理に敬語を使わなくても大丈夫です」

「あなたも敬語です」

「私は誰に対してもこうです。貴方も話しやすいように話してください」

「……」

すると、少年が初めて感情めいたものを見せた。迷い思考するようにシャロンを見つめた。

「どうかしましたか?」

黒い瞳を見つめ返してシャロンは聞いた。思考とは呼べぬ場所で、ノエルの瞳をなんとなく気に入っていることに、シャロン自身は気付いていない。

「あの人に、“オレ以外のやつには生意気な口をきくな”と言われた……」

「ああ、そういうことですか」

すでに敬語が取れていることはあえて指摘せず、シャロンは合点した。確かに鬼族には気性の荒い者が多い。シャンディの客人なら余程大丈夫だろうが、気をつけるにこしたことはない。

「私にも気遣いは不要です。ただ、他の鬼とは兄さんの言う通りに接してください」

「分かりまし……いや、わかった」

今度は逆に敬語で話してしまいそうになって訂正している。その姿がどこか可笑しくて、シャロンは和んだ気持ちになった。

(——この子といれば、しばらくは退屈しないかもしれませんね)

この部屋に閉じこもってすでに百年以上経つ。いい加減、飽き飽きしてきたところに訪れた巡り合わせだった。

ヒト族の寿命は極端に短いという。この子はどれくらい生きるのだろうと、将来大いに悩むことになる問題を、今は一時の好奇心としてシャロンは抱いていた。

【つづく】⇒②へ

>>『ハロー・ワールド』の本編はこちら

スポンサーリンク



《作品のブラッシュアップ!!》
あなたの小説に感想&アドバイスお届けします

日々小説に打ち込んでいる僕が、あなたの小説をより良くするお手伝いをします。特に新人賞狙いの方にオススメです!




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
の項目は必須項目となります。