三題噺「10日目」のお題は「苔・間違える・ブイ」

みんなで「三題噺」の企画。
本日は第10回となります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

【初心者歓迎!】小説を書く練習として「三題噺」を書いてみませんか?

2019.04.13

それではさっそく。
今回のお題は以下の3つ。
(出題には『どこまでも、まよいみち』というサイト様の『三題噺スイッチ改訂版』を使用させていただきました)

「苔」「間違える」「ブイ」です。
みなさんも挑戦してみてくださいね!

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お題「苔」「間違える」「ブイ」

「……ここに落としたって?」

海岸の砂浜にいた。眼前には緑色の“山”がそびえている。苔むしたブイが大量に積み上げられてできたものだ。

その前で、口元を引きつらせながら少年は立ち尽くす。

えへへ、と隣では少女が照れたように笑った。

「困ったね」

とてもそうは思えない声音で少女が言う。

一方の少年は努めて冷静さを保とうと必死だ。

「国宝の玉を、単身の飛行魔法でキミが運んだと?」

「うん。専用の魔導艇を用意するって言ってたんだけど、魔導艇は最近いろいろと入り用で、艇員のみなさん疲れてるようだったの。だったら、私が飛んだ方が速いしいいかなーって」

「キミは優しいね。で、梱包もせず、しかも素手で宝玉を運んだと。そして、途中でこのブイの山のなかに落とした?」

「あはは、参っちゃうよねー」

「……挙げ句、苔むしたブイを間違えて神官様に手渡したそうで」

「だって、ここの魔苔すごく綺麗で間違えてしまったの」

その神官も間違いを見抜けず、ただの苔むしたブイに魔力を込め、砕けて飛散させた。しかも国を挙げての式典の途中で。国宝が砕けたと大騒ぎになったのは言うまでもない。

平和ぼけして久しい国ではあるが、そんなことで大丈夫かと少年は嘆息する。

元凶となる少女に与えられた罰も、宝玉を探して持ち帰るだけときている。

「王もたいがい娘に甘い……」

姫でありながら、国を代表する魔法使いでもある少女を、少年はじとりと見た。

美しい緑陽石のような瞳と目が合って、ふにゃりと笑まれてしまった。この爛漫な姫君に泣きつかれ、半ば強引に連れてこられた少年だったが、それだけでもう勝てる気はしない。

「それでは姫様。いっしょに宝玉を探しましょう」

あえて外向けの口調で言ってやると、少女が少しだけむくれる。

「二人のときはその話し方、やめてよね」

「現在は、公務の途中ですから」

意地悪するつもりで言って、苔むしたブイを選別するという陳腐な“公務”に取りかかると、少女もまた不服そうにではあるが、作業を開始した。

改めて見ると、確かに魔苔に覆われたブイは美しい。見た目だけなら宝玉と間違えてしまうのも仕方ないのかも知れない。

「きれいだね」

ブイを一つ手にとった少女が言う。

少年の手にも、同じものが握られている。苔と称するには意外なことに、質感はすべすべしていた。ますますもって紛らわしい。

「ここまで成るのに、どれだけの時間を経たんだろうね」

陽光を受けて新緑に輝く山を、少女が優しげに見上げた。

きっと、少年と少女が生まれるずっと前から、気の遠くなるくらいの時間をかけて、ここまでになったはずだ。ブイとしての機能を阻害する悪者ではあるけど、目の前の美しい光景に思うところがないでもなかった。

「魔苔は、観賞用にも使われるらしいよ……」

「うん?」

「宝玉を見つけたら、少しだけ持ち帰ろうか」

「……うん!」

照れ隠しのようにまた作業を始めた少年を見て、少女はにこっと笑ったのだった。

【完・36分で1196文字】

あとがき

三題噺を書くときは、できるだけテーマや意味をもたせるようにしてきましたが、今回は何も浮かばなかったので、とにかく思い浮かぶままに書きました。

そして気付いたことがひとつ。
ラストの一文は登場人物に笑わせて終わることが多いようでした。
無意識にやっていましたが、心地よい余韻を出すには便利な終わり方と考えていたらしいです。

ワンパターンは避けたいところなので、噺をどう着地させるかも今後工夫していきたいところ。

みなさんもぜひ三題噺を書いてみてください。
投稿いただける場合は、下のコメント欄からお願いします。

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生きてる内にあとどれだけ書けるだろう
同じ執筆量で、より巧く。

無思考で書くのは、ほんとうに勿体ない。
たった少しの意識で、あなたの小説はもっと良くなります。




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