三題噺「11日目」のお題は「沃地・料理人・碑」

みんなで「三題噺」の企画。
本日は第11回となります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

【初心者歓迎!】小説を書く練習として「三題噺」を書いてみませんか?

2019.04.13

それではさっそく。
今回のお題は以下の3つ。
(出題には『どこまでも、まよいみち』というサイト様の『三題噺スイッチ改訂版』を使用させていただきました)

いつか来ると思っていましたが、ついに読めない&意味不明な単語が来ました。(さすがに調べてから書き出しました)
ということで、本日のお題は「沃地(よくち)・料理人・碑(石碑)」です。

みなさんもふるってご参加ください!

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お題「沃地」「料理人」「碑」

滞在した村の中央部に、大きな石碑があった。

古い言葉で綴られたその文字を、男が熱心に眺めている。

「旅の人、あんたその文字が読めるのかい?」

一人の村人が尋ねた。

「ん? ああ、少し齧った程度だけどね。何となくの意味は分かりますよ」

「ほお、それはすごい。今ではその言葉を読めるものは村にもいなくなってしまった。村の語り部であるばあさんも、近頃は記憶が怪しくてね。なんて書いてあるんだい?」

「料理についてです」

男が端的に応えると、村人は面食らったような様子になる。

「料理? こんな立派な石碑に?」

「ええ」

男は指を顎に当て、しばらく思案げにしていたかと思うと、一人合点したように頷いた。

「うん。面白い」

「は?」

訝しげな村人に、男が言った。

「この村の畑を見せてもらえませんか? そして、少しだけ作物を分けていただきたい」

「それは構わんが、腹が減ったのかい?」

「いえ、食べるのは貴方がたですよ」

ますます困惑を浮かべる村人へ、

「——俺は料理人ですから」

男は誇るように言った。

村の畑は、相当な沃地(よくち)だった。

土が肥えている上に、天候にも恵まれているのか、どの作物も大ぶりで艶がある。料理人である男にとっては、まさに宝の山だった。

しかし数ある作物の中から、男がまっさきに所望したのはとあるイモだった。

広大な畑にあって、ほんの一角でしか作られていないものだ。

「旅人さん。申し訳ないがそれは食用じゃねぇんだ。村のまつりごとのときに供えるためのもんだ」

「もしかして、食用にしてはいけない決まりでも?」

男は恐る恐るといった様子で尋ねるが、

「いや、そんなことはねぇ。ただ、そのイモは煮ても焼いても食えたもんじゃないぞ? とにかくマズいんだ」

村人の返答に安堵を見せる。村人にしてみれば、外の人は変わっていると思うばかりだった。

「石碑に、このイモのことが刻まれていました」

「ほう……?」

「まあ、見てて下さいよ」

男が意味深な笑みを浮かべる。

大きくもない村だ。情報が広がるのは早い。滞在中の旅人が妙なことを始めたという噂で、多くのものが集まってきていた。

いくつかのイモを持ち帰った旅人は、世話になっている家のいろりを借り、湯を沸かしていた。その傍らには、火に掛けていない鍋と、飲料用の水を入れた容器が準備されている。

「沸いたな」

男は湯が沸いたのを確かめると、それを準備していた鍋に移していく。半分ほど鍋が満たされたところで、なんとせっかく沸かした湯に、今度は水を入れてしまった。

見学の村人が呆けているのをよそに、男は作業を続けている。ぬるくなってしまったであろう湯に小指を入れて頷いたかと思うと、そこにあのイモを投入した。

そこから、面白みのない工程が延々と続いた。

男は一人鍋と向き合い、時折沸騰した湯や水を足していく。その度に小指を浸けているのは、どうやら温度を見ているらしかった。

それが、半日ほど続いた。

見学のものはずいぶん前に散ってしまっていた。残ったのは、男を畑に案内した村人だけだ。

「そろそろか」

じっと鍋の中を見ていた男が、半日ぶりに言葉を口にした。

「なにがだい?」

尋ねる村人をよそに、男が鍋からイモを取り出す。

そしてそのまま、かぶりついてしまった。

見ていた村人は驚き、幼い頃口にしたあのイモの味を思い出してしまって顔をしかめた。男がどんな反応を見せるか窺っていると、それは意外なものだった。

男は瞠目し、自分が齧ったイモの中身を一心に眺めていた。

「こいつは……予想以上だ」

そう呟くと、イモをもうひとつ取り出し、綺麗な布で水気をとって村人へ放り投げた。

「食べてみて下さい」

受け取った村人は最初、頑なに拒んだが、男に強く薦められておそるおそる口へ運んでいく。男が村に訪れて数日だが、その程度の信頼はおける男だと、この村人は思っていた。

小さく一口。

ぎゅっとつぶっていた村人の瞼が、その瞬間大きく見開かれた。

「……美味い」

「だろう?」

「いったい、どうして……?」

ひとり言にも近い問いに、待ってましたとばかりに男が答えた。

「あの石碑に書かれていたんですよ。このイモは、ぬるま湯で調理しないと真価を発揮しない」

自身ももう一口食べながら、男は興奮を抑えられない様子だ。

「ここからが難問だ。この素材を生かした料理を創作してやる」

どうやらこの旅人がもうしばらく村に滞在するつもりらしいことを悟った村人は、自分もその料理をぜひ食べてみたいものだと思ったのだった。

【完・44分で1803文字】

あとがき

食べることは生きる上で必須なので、物語の題材として扱うには良いのかなと思います。

低温調理でしか食べられない食材が実在するかはさておき、今回の設定は広げていくと面白そうだと感じました。
「ファンタジー的な世界観」「料理人」そして「旅人」。
まだまだありきたりですが、いくらでも話を広げられそうです。

これはちょっと面白そうなので、良く練って新人賞の投稿用に書いてみようかと思います。

個人的には『異世界料理道』なんかはすごく好きなんですよね。
異世界に転移してしまった少年料理人の話です。
飛ばされた先で出会ったのが、森で暮らす種族の女の子。その子が、本来は男の仕事である狩りを自らやっているのですが、せっかく狩ってきた得物もろくに味付けせず、ただ「栄養補給」のために食べているありさまなんです。
種族全体が「食を楽しむ」という概念が皆無で、少年はその場所で料理人として奮闘する、って感じです。

『異世界料理道』は異世界モノでありつつ、わりとリアル寄りの話なので、もう少しラノベファンタジー的な要素を加えたら、また違った面白みが出るのではないかと思います。
そういう作品もありそうなので、少し料理系の小説を読み漁るのも良いかと思う次第です。

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