三題噺「12日目」のお題は「岬・貧乏・閻魔帳」

みんなで「三題噺」の企画。
本日は第12回となります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

【初心者歓迎!】小説を書く練習として「三題噺」を書いてみませんか?

2019.04.13

それではさっそく。
今回のお題は以下の3つ。
(出題には『どこまでも、まよいみち』というサイト様の『三題噺スイッチ改訂版』を使用させていただきました)

本日は「岬」「貧乏」「閻魔帳」です!

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お題「岬」「貧乏」「閻魔帳」

「まったく釣れねぇ……」

口にしたら腹の虫が盛大に飢餓を訴えてきた。

最初こそ人体の生理現象というやつを楽しんでいたが、空腹というものがこうまで苦しいとは。さっそく地獄が恋しくなっている自分がいる。

岬の岩場で釣りを始めてはや数十分、いっこうに引きはない。

「親父のヤツ、覚えてろよ。大体、可愛い息子を無一文で地上に放り出すなよっ」

恨み言を口にしたところで釣れるわけもなく、ましてや腹が満たされるわけでもない。

「さっさと仕事を終えて帰ってやるからな……」

ひとり言の多い自分に辟易してため息をついたとき、遠くの砂浜に人影があることに気付いた。子供のようだ。四人いる。

「近所のガキどもか?」

海辺に遊びにでも来たかと思ったが、どうも様子がおかしい。

学校帰りなのだろう。“ランドセル”とかいう入れ物をみな背負っている。……一人を除いて。

その一人の“ランドセル“を、他の三人が取り上げて遊んでいるようだ。取り返そうと追ってきたガキが目の前に来ると、いじめっ子どもは別のヤツに投げてよこす。その繰り返しだった。

「平和だねぇ」

釣りの事なんて忘却の彼方だ。俺はその様子をしばらく傍観していた。

と、いじめっ子の一人が、“ランドセル”を海へ投げ捨ててしまった。靴を履いたまま、慌てて海に入っていくガキを見て、他の三人は腹を抱えて笑っている。

俺は口の端がつり上がるのを我慢できなかった。

「決まりだ」

懐から真っ黒な手帳を取り出すと、あの三人の子供の名前をそこに書き記す。俺の目は特別製で、人を見るだけでそいつの名が分かるのだ。

書き留めた瞬間、また腹の虫が鳴った。

『閻魔帳』。そう書かれた手帳を懐にしまった俺は、再度釣りに勤しんだ。

水平線に日が沈む。

「飢え死んだら“謁見の間“で殴り殺してやるからな、親父……」

ついに一匹も釣ることの出来なかった俺は、すでに帰り支度を終えている。

とぼとぼと岬を後にして海沿いを歩いていると、いつの間に現れたのか、目の前に一人の女が立っていた。海辺には似合わない、無駄に美しい着物を着た女だ。

「お疲れさまです、坊ちゃん」

「坊ちゃんはやめろ。なに? 親父に言われて様子でも見にきた?」

「いえ、私の独断です」

「ふーん」

どうやら俺を心配して来てくれたらしい。まあ、だからといって感慨もなにもないのだが。同情するなら食い物が欲しい。

「成果はどうでした?」

「ご覧の通りさ」

空のバケツをみせてやると、女は眉をひそめる。俺はほくそ笑む。

「釣果、ではありません」

「ああ、こっちね」

わざとらしく閻魔帳を取り出して見せると、女は頷いた。

「まだまだこれからだが、将来有望そうなガキが三人だ」

「それは重畳です。では残り八四人ですね。お早い帰りを、お持ちしています」

気付いたときには女はいなくなっている。そっけないやつだ。思えば、昔から喰えない女だった。

「しかしまあ、時代が変わるねぇ」

“あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい“。

地上の神には、そんなことを言ったやつがいるらしい。

「ばーか。罪を犯したことのないヤツは、そこで石を投げないから罪を犯したことがないんだよ」

地獄では生前に罪を犯したヤツらに罰を与える。

これまで、罰を与える役割を担ってきたのは、天国行きになったヤツらだった。それこそ、罪を犯したことのないヤツらが断罪してきたわけだ。善人も、それが仕事なら石だって投げる。面白いものだ。

しかし天国行きになるような頭の弱い連中にとって、それは拷問に等しいようだ。罪人相手とはいえ、他人を傷つけることに苦しむヤツが多発し、任を続けられなくなった。地上風に言うと、“りしょくりつ“とやらが以上に高かったわけだ。

そこで俺の親父、閻魔大王は考えた。罪人に罪人を裁かせる制度を。

俺の手帳は、その“断罪人”を選考するためのリストだ。

「ククク。ガキども、楽しみにしてな。見事選ばれれば、悠久の時を“いじめ”に費やすことができるぜ。地獄の罰は並大抵じゃない。罪人どもの阿鼻叫喚が脳裏から離れなくなってもなお働かせてやる」

我ながら悪い笑みを浮かべていると、また腹が鳴った。途端にしゅんとした気分になった。

「……まずは俺が生きのびることを考えなきゃな」

大きなため息を吐いて、真っ暗になった岐路に俺はついたのだった。

【完・62分で1746文字】

あとがき

醜い悪を書くのが苦手です。
そう再確認させられました。

今日の三題噺では ”いじめっ子” が出てきましたが、書いていて気分のよいものではありませんでした。

一方で、悪の化身的なイメージで書いた語り部に関しては、割と乗って書けたので不思議なものです。
何でしょうね。リアリティの問題でしょうか?

自分の頭の中もまだまだ理解できていないと思う次第。

ちなみに“あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい“ は、聖書の言葉ですが、言葉だけ知っていて書いたので、実際のところどういう意図なのか気になる人は調べてみて下さい。
また、聖書を大切に思っておられる皆さまに置かれましては、今回の三題噺がフィクションの創作であることをご理解いただければ幸いです。

ともあれ、今回思いついた設定もなかなか面白そうですね。
三題噺を書いていると、同時に小説ネタもストックしていけるのがありがたいところです。

みなさんも、ぜひご参加ください!

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生きてる内にあとどれだけ書けるだろう
同じ執筆量で、より巧く。

無思考で書くのは、ほんとうに勿体ない。
たった少しの意識で、あなたの小説はもっと良くなります。




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