みんなで「三題噺」の企画。
本日は第14回となります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
それではさっそく。
今回のお題は以下の3つ。
(出題には『どこまでも、まよいみち』というサイト様の『三題噺スイッチ改訂版』を使用させていただきました)

「孤島」「秘密」「本殿」です!
お題「孤島」「秘密」「本殿」
——はたして、自分は誰に切っ先を向けているのだろう。
途端に記憶の奔流が、少年の心を呑み込もうとした。
小さな本殿を背に、“少女”の形をした彼女は寂しげに笑う。
——あぁ、俺は今、自分の喉元に刃を突き立てている。
彼女に切っ先を向けながら、思考とも呼べぬ確信が、少年の行動に先んじようとしている。
斬るべきは、彼女でも、ましてや自分でもなく、彼女の背後に建つ本殿だった。
「どうして、俺を育てた……」
絶海の孤島に流れ着いてからの10年間、彼女の愛情を一身に受けて育てられ、生きてきた。なのに。どうして。
「愛していたから」
応えた彼女が、迎え入れるように両腕を開いた。
幼い頃から、何度も自分を抱きしめてくれた腕が、今、迎え入れようようとしているものを悟って、少年は唇を噛み締めた。
——だから斬るのか。こうなるとわかっていて、それでもなお。
こうなることが分かってしまってから、ずっと泣き続けてきたが、ついに涙を流したのはこれが初めてだ。初めてで、きっと最後になる。
「俺も、貴女を愛しています」
だから。
だから、きっと——。
【完・14分で442文字】
あとがき
それっぽい演出が書きたかったのですが難しいですね。
三題噺を書き出してから、「書くべきこと・書くべきでないこと」を意識するようになりました。
小説で語られるシーンは、彼ら、彼女たちの人生の一部でしかないわけで、とてもじゃないけど、語り尽くすことはできません。
どこまで読者に伝えるか。
逆にどこまで、読者の想像に託すか。そして、想像の指標をどう描くか。
この辺りには細心の注意が必要だと、最近強く思うようになりました。
主人公に入り込んで読む人。自分と重ねながら読む人。
読者の想定をもっと意識していきたいですね。(もちろん、自分がどう読んで欲しいかも含めて。)
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