『声優ラジオのウラオモテ』の感想。第26回電撃大賞”大賞”作です!

『声優ラジオのウラオモテ』は二月公先生による作品。
第26回電撃小説大賞にて”大賞”を受賞してます。

二人の女子高生声優が主人公。
プライベートでは仲の悪い二人が、一緒にラジオパーソナリティを務めることになり・・・。

あらすじやネタバレ無しの感想に加え、作家視点での小説分析も載せています。
後半はネタバレ満載になっておりますので、未読の方はご注意ください!

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『声優ラジオのウラオモテ』のあらすじ&おすすめポイント

声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない? (電撃文庫)

主人公は二人の女子高生声優!

二人の女子高生声優が主人公です。

由美子(芸名:歌種やすみ)と千佳(芸名:夕暮夕陽)。
二人とも同じ高校に通っているものの、互いが声優業をしていることを知らない所から物語は始まります。

互いに声優であることを知らないまま出会った二人はそりが合わず、口を開けば悪態ばかり。
相手が同業者であると知ってからも、ギスギスとした関係は続いています。

そんな中、「女子高生声優」「同じ学校、同じクラス」という話題性を見いだされた二人は一緒にラジオパーソナリティを務めることになって・・・

声優ラジオの”ウラオモテ”

タイトル『声優ラジオのウラオモテ』。
この”ウラオモテ” こそキーワードです。

実は千佳も由美子も、プライベートと仕事でキャラが大きく異なっているんです。
正確には仕事では売れるためにキャラを作っています。

千佳はプライベートでは、大人しく真面目な性格です。
そこに”毒舌で攻撃的”、そして由美子いわく”根暗”という要素も合わせ持った少女。

しかし声優としての千佳(夕暮れ夕陽)は、売り出し中のアイドル声優という立ち位置です。

一方の由美子は、プライベートではギャル風の女の子
個人的な感想ではバリバリのギャルというより、今時の女子高生といった印象を受けました。友だち付き合いも上手で、強気な性格の由美子ですが、声優・歌種やすみとしての姿は千佳と同じアイドル声優。
ただ、千佳とは違いこちらは、まだそこまで売れていない段階です。

プライベートでは水と油の性格の二人ですが、ひとたび声優として働く際には”アイドル声優”を演じなければならないわけです。

オモテ⇒アイドル声優として可愛らしく振る舞い、ラジオでも仲の良い同僚を演じる。

ウラ⇒外交的な由美子と、内向的な千佳は犬猿の仲。

↑こんな二人の行く末を、ラジオ番組を軸に見守る物語となっています。

”女子高生声優”ならではの苦悩

性格こそ異なる二人ですが、本質的な部分ではどこか似ています
ネタバレを避けるため、ここでは多く語りませんが、二人の表層的な性格と、深層的な性格に注目しながら読んで頂けると、より楽しめる作品です。

先述したように由美子も千佳も、プライベートでの性格とは異なる”アイドル声優”を演じているわけですが、多感な年頃の少女たちが偽りの姿で働くことに苦悩してしまうのは当然のこと。

犬猿の仲。でも互いに最大の理解者となっていく二人が、どのように苦難を乗り越えていくかにも注目です。

百合要素も満載?

シリアスな要素もある本作ですが、基本的には微笑ましい気持ちで読み進めることができます

ラノベとしては珍しく少年少女の恋愛要素は皆無。
代わりとばかりに、由美子と千佳の何気ないやり取りがこれでもかと描かれています。

一見しっかり者の千佳ですが、実は天然なところもあって、由美子がそんな千佳に振り回されるといったシーンが多め。
互いに悪態を吐いてばかりなのに、端から見ればずっとイチャイチャしている印象しかありません。笑

ラノベではお馴染みの冒頭カラーイラストでは、二人の入浴シーンまで描かれています。

ネット上の評判を見ていても、百合要素好きの読者には受けが良いようです!

『声優ラジオのウラオモテ』の感想(ネタバレ無し)

電撃大賞”大賞”に恥じない一作。ラノベの良さを再確認!

これぞラノベ! これぞエンターテインメント! という感想が一番に来ました。

良い意味で気軽に読める作品です。
少女二人の関係性に注目して読むのが最大の楽しみ方だと思います。

二人の少女の”ウラオモテ”が最大の魅力と思う

表面上は悪態を吐き合っている二人ですが、読者視点では互いに尊敬、信頼し合っているのが丸わかり。
だから本当に微笑ましい気持ちで読むことができます。

その上で、ストーリーにも適度な盛り上がりがあるので、二人に感情移入しながら応援できること受け合いです!

とても読みやすい文体です

良い意味でラノベラノベしている作品です。

無駄に文章を長くすることもなく、親しみやすい感情的な描写に溢れているのでスラスラ読めてしまいます。

そしてラジオをテーマにしている作品だけあって、少女たちの会話が素晴らしいです。
性格や関係性が露わになるテンポの良いやり取りは、本当に頭の中で声が聞こえてきそうなくらいでした。

『声優ラジオのウラオモテ』おすすめです!

魅力的な二人の少女が喧嘩しているかと思えば、いつのまにかイチャついている不思議な作品。

ストーリーのテンポも良く、シリアスな場面も必要最低限に抑えられているので、肩肘張らず読んで頂ければと思います。

これ以降は作家視点での小説分析を行っていきます。
ネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください!

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『声優ラジオのウラオモテ』を分析

「二人の関係性」でプロット分析

『声優ラジオのウラオモテ』の魅力は何といっても由美子と千佳の関係性だと感じました。
そこで今回は二人の関係性の変化点に着目して、プロットを見てみようと思います。

独断で6つにフェーズ分けしました。

『声優ラジオのウラオモテ』は全341ページです。

  1. 1~68ページ(20%)【必要な情報の開示】
    由美子と千佳の紹介/二人でラジオを始めるという物語の方向性を提示
  2. 69~140ページ(40%)【仲は悪いが歩み寄ろうと努力】
    二人とも不器用ながら歩み寄る意志を見せる/互いの境遇が似ていると判明(父親がいないなど)
  3. 140~180ページ(52%)【苦悩する由美子】
    主に由美子の葛藤を描く/千佳が由美子の実力を認めていることを明らかに
  4. 180~207ページ(60%)【二人で苦難を乗り越える】
    二人共通の窮地へ立つ/協力して乗り越える/それでも露わになる力不足⇒共通の課題と未来への指標
  5. 207~259ページ(75%)【いっそう親交を深める日常】
    千佳の家へ泊まり、さらに親交を深める/互いにリスペクトし合っていることを言葉にする
  6. 259~341ページ(100%)【事件発生から解決へ】
    ラジオの打ち切り決定/千佳の出世による由美子の嫉妬/仲違い(嫉妬による由美子の八つ当たり)/千佳の裏営業疑惑/由美子は千佳を信じる/”ウラオモテ”がバレる/由美子を守り、自分は声優を止めると告げた千佳/声優生命を懸けて千佳を守ろうとする由美子/千佳が駆けつけ、ラストへ

大雑把ですが上記の感じです。

印象的なのが、事件発生(千佳の裏営業疑惑)から解決までが早いことです。
全体の75%くらいまでは二人が仲を深めていく過程に絞って展開しています。

そして75%時点で千佳の裏営業疑惑が発生し、あとは息も吐かせぬ展開でラストまで持っていく

一見早急に見えますが、読み進めていてもまったく気になりませんでした。
それどころかカタルシスは十二分で読後感も最高。

理由の一つは、事件の伏線を細かに張っていること。
木村というキャラの視点で、序盤から何度も不穏な空気を出していますし、千佳のアニメ好きや家族構成といった話も読者に納得感を与えるのに一役買っているのは間違いありません。

でもそれ以上に、起こった事件を二人の絆で乗り越えたのが大きいと言えます。

当初は仲が悪かった二人。
それが一緒に過ごすうちに認め合い、かけがえのない存在になっている。
事件を通してそれが明確に表現される。

↑この過程を辿れるのであれば、おそらく事件の内容はどんなものでも良かったはずです。

要するに『声優ラジオのウラオモテ』という小説のプロットは、ストーリーに重きを置くのではなく、あくまでキャラやその繋がりを際立たせるために作られているのだと思います。

キャラの魅力を引き出す文体と会話文

『声優ラジオのウラオモテ』の文体はとても読みやすいです。
由美子視点の三人称が主体ですが、時には一人称のような表現も用いています。
その上で決して稚拙には見えないのが素晴らしいです。

小説を書かれる方は、上記のような点を学ぶつもりで読むと有意義かもしれません。

そして何と言っても由美子と千佳の会話文が素晴らしいです。
以下は個人的に感銘を受けたシーンです。

「わたしはこの人と仲良くはないですし、仲良くしたいとも思ってないですが大丈夫ですか?」
「は? そんなの、あたしも同じ思いなんですけど?」
「あら奇遇ね。なら、今のわたしの気持ちもわかるかしら。喧しいな、と思ってるんだけど。ちょっと静かにできる?」
「黙り込むのはあんたの領分でしょ。教室で静にするのが仕事みたいな奴が。根暗女の子守りなんて頼まれてもやらないからね」
「こも……、出たわ。あなたのそういうところ、本当に嫌い。騒ぐだけしか能がない連中って、なんでこうも上から目線なの? 人とお話するのが苦手なあんたこそ、鳥か獣じゃない」
「キーキーうるさいお猿さんね」
「猿よりコミュ力ない奴がなに言ってんの?」
「は?」
「あ?」
「……ええと。ふたりとも、そんな空気絶対に収録で出さないでね。別に収録外で仲良くする必要はないしプライベートを切り売りしろ、とも言わないけど、普通にはして? 学校での話が時々あれば、あとはほかのラジオと同じでいいから。ときに聴くけど、君たち同じクラス?」
ボールペンを向けられ、由美子はこくりと頷く。

『声優ラジオのウラオモテ(二月公/電撃文庫)』56,57ページより

僕がこの描写から学んだのは以下の点です。

  1. テンポ重視で、地の文を取り払って会話文を連続するのも効果的。
  2. 最初は長文で論理的だが、段々と語彙を減らしていくことによって感情的になっていることを表現する。
  3. 三人目の発言を地の文なしで入れている。誰の発言か明白なら地の文を省いてもOK。

僕は会話文の間に地の文を入れたがる癖があることに今回気付きました。
会話文が連続すると不安、という人も少なくないと思いますが、上記のように良いリズムを生み出すことを意識してみても良いかももしれません。

『声優ラジオのウラオモテ』ネットでの評価は?

最後にネット上での感想や評価をまとめてみたいと思います。

【ポジティブな感想や評価】

  • キャラが良い。
  • 百合要素が良い。
  • 心理描写が上手い。
  • 掛け合いが良い。
  • 展開のリズムが良い。
  • ミスリードも上手い。(木村というキャラに関して)

 

【ネガティブな感想や評価】

  • ひねりが少ない。(リズムが良いことの裏返しで、好意的に書かれていた感想です)
  • 読後感は良いが、エピローグがもっと欲しかった。
  • 声優業を事細かに描いた、いわゆる”お仕事系”ではなく、あくまでキャラで魅せる小説。

 

一応ネガティブな感想や評価も載せておきましたが、ほとんどの人が”面白い”と断じた上での意見でした。
軒並み高評価で流石は大賞受賞作ですね。

プロット分析の内容とも概ね合致して、やはり由美子や千佳のキャラに惹かれた人が多いようです。
エピローグが薄く感じたという感想は僕も少し感じたことですが、これは「もっと続きが読みたい」ということでもあります。

まとめ:電撃大賞”大賞”に恥じない『声優ラジオのウラオモテ』

読者視点でも、作家視点でも大いに感銘を受けた作品でした。

2巻が楽しみですし、何より『声優ラジオのウラオモテ』に見習うべき「読みやすさ」「プロットのテンポ」「キャラの魅力」「会話文での表現」といった部分は今後の執筆に活かしていきたいと思います!

もしよろしければ、『声優ラジオのウラオモテ』1巻に対する皆さんの感想や評価、そして分析も教えて頂ければ嬉しいです。
気兼ねなく下部のコメント欄に書き込んでください。小説を愛する者同士、語り合えたらと思います^^

それではここまで読んで頂き誠にありがとうございました!

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