時は江戸時代。父から虐待を受けていた妹と共に家を飛び出した少年は、とある男に拾われます。男とその娘、そして妹と共に暮らすことになった少年に待ち受けている未来は?
[voice icon=”https://izenkei.com/wp-content/uploads/2019/01/fd261bfb4bc7e62020d86679888512ec-20190111224533.png” name=”葛史エン” type=”l”]久々に完全に予想を外されました。そして言語化するのは難しい感情にさせられた作品です。
とにかく読んでみて欲しい一作![/voice]
『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』のあらすじ
序盤から重要な情報盛りだくさんの作品なので、ネタバレなしで書くのが難しいのですが頑張ります。笑
時は江戸時代。
齢わずか五つの少年・甚太は、一つ下の妹・鈴音を連れて家を飛び出しました。
父親が鈴音を虐待していたのが原因です。
雨の中、途方に暮れる甚太たちの前に一人の男が現れます。
男の名は元治。自身を「巫女守(みこもり)」と名乗る元治は、逡巡なく甚太たちを拾います。
元治が住む村「葛野(かどの)」に連れられた甚太と鈴音は、元治の娘・白雪と出会いました。
父親が突然連れてきた見ず知らずの子供を、白雪は温かく迎えます。
家族同然の関係で過ごす甚太たち。
元治が務める”巫女守”は「村の巫女を守る者」で、その巫女というのが元治の妻であり白雪の母でした。
神聖な巫女である母親と3年も会っていないという白雪の寂しさを知った甚太は、不器用ながら白雪を慰めます。
今になって初めて知る、俺を救ってくれた彼女の弱さ。
「あの、さ。俺は一緒だからな」
「え?」
「俺は、ずっと一緒にいるから」
俺がいるから寂しくない、とは言えなかった。母親と会えない彼女の寂しさを埋められる、なんて自惚れてはいない。でも、傍にいたいと思った。出来ることなんてないけれど、せめて一緒に悲しんでやりたかった。
「なにそれ」
「笑うなよ」
「だって」
楽しそうな白雪に、顔が熱くなる。我ながら恥ずかしいことを言ってしまった。
だけど撤回はしない。本音を嘘にするような真似は、もっと恥ずかしい。中西モトオ『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』(Kindle の位置No.188-195)
甚太と白雪は互いに惹かれ合っていき、鈴音もそんな二人を応援していました。
でも世界は”ままならない”のが常です。
果たして甚太たちに訪れる未来とは・・・?
ネタバレ無し『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』の感想
胸を締め付けられるような展開が続きました。
ラストも予想できないもので、久々にページをめくる手が急かされた思いです。
甚太と白雪。二人の関係にやるせない思いになりました。
二人の関係は『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』の大切な要素です。
互いにこれでもかってくらい想い合っているのに”ままならない”展開が続きます。
二人の真摯な想いに触れていると「理解は出来るけどやりきれない」という感想が浮かんできます。
こんな形の関係もあると割り切れる読者もいるのでしょうか?
年齢だけ重ねてしまった青二才の僕から見ると、もっと素直になって欲しいと思わずにはいられませんでした。
みなさんはこの二人の関係に何を感じるのでしょうか?
甚太と白雪、そして鈴音。
鈴音の存在も極めて大きいです。
下記の描写は『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』で最も重要な箇所だと個人的に思っています。
俺を救ってくれた二つの笑顔、伸ばされた二つの手。木刀を持っているから片方しか取れなかった。
だから、自然と一つの手を選ぶ。
握り締めた掌は小さくて、あたたかくて。離さないように、でも壊してしまわぬようほんの少しだけ力を込める。
「ああ、行こうか」
一緒になって笑って、三人で走る。
いつもと何一つ変わらない、当たり前の朝だった。
握った手のあたたかさを知っていた。いつか離れると知らずにいた。
まだ俺が甚太で、彼女が白雪で、鈴音が鈴音だった頃の話である。スポンサーリンク中西モトオ.『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』 (Kindle の位置No.215-220)
多くは語れませんが、この三人の関係にぜひ注目して読んでみて下さい!
続きが読みたくなること必至です
『鬼人幻燈抄』の原作はWEB小説のようです。
「何度読んでも号泣必至」「人生観が変わった」と絶賛の嵐だったWEB小説シリーズが、待望の書籍化!
全編改稿のうえ、書籍版番外編も収録。Amazon『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』の商品ページより
WEB小説を改稿し、順次書籍化されています。
第一巻となる『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』を読めば、きっと続きが読みたくなります。
(僕はすでに二巻をKindleで購入しました。笑)
それくらい衝撃的な終わり方をしていたんです。
ちょっとだけ感想を漏らすと「スケールの大きい物語」といった感じです。
おすすめの一作です。
ぜひ手にとってみて下さいね!
ネタバレ有り『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』の感想
ここからは多少のネタバレを含んだ感想を書いていきます。未読の方はご注意ください。
また、僕は自分でも小説を書いているので「書き手視点」での感想&分析も書いていきます。
鈴音の正体は匂わされていましたが・・・
鈴音の”正体”に関してはいくつか伏線が張られていました。
だから願った。この娘が何者だとしても、最後まで兄でありたいと。
中西モトオ.『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』(Kindle の位置No.36-37)
甚太が、鈴音と白雪の「どちらの手を取るか」は序盤で示されている大きな指標です。
巫女の娘が白雪。なら鈴音は・・・?
という形で読者の興味を惹くことに成功しています。
しかし鈴音の正体が分かっても、その先の展開を予想できる人は少ないんじゃないかと思いました。
絶対にハッピーエンドと予想
序盤の展開は割とありがちなものでした。
甚太と鈴音が白雪と出会い「どちらを選ぶか?」という描写が出た時点で、恥ずかしながら僕の予想は「甚太がどちらかを選びながらも無難にハッピーエンド」というものでした。
結果、予想は全然当たらなかったわけですが・・・。
良い意味で期待を裏切られました。
まさかあんな展開になるとは・・・。
登場人物たちに行動理念がある
この物語の主要人物にはそれぞれの”理念”があります。
だからこそ共感できないような選択を甚太や白雪がしても、読者は納得することができるのだと思います。
理念を踏まえた上での心の機微を描くのは難しいと思うのですが『鬼人幻燈抄』ではそれが上手く成されているように感じました。
「結局、私達は、曲げられない『自分』に振られたんだね」
中西モトオ.鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』(Kindle の位置No.1449)
白雪のこのセリフが強烈に印象に残りました。
もちろん甚太や白雪に限らず、鈴音やもう一人の巫女守である清正、そして敵として登場する鬼までもが明確な理念を持っていました。
こういった部分が読者を強く惹きつけるのだと勉強させてもらいました。
おわりに
自分で記事を読み返してみて、今回はかなり感情的になっていると気付きました。笑
これはちょっとスゴい作品なのではないでしょうか?
二巻も楽しみにしたいと思います!
PS.
最近Kindleで読書しているのですが、かなり使い勝手が良かったので記事にしてみました。
電子書籍に興味のある方、もしくは長く試してみたことが無い方はぜひご覧になってみてください!
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