恋愛は人間の大きなテーマのひとつです。
小説においても恋愛の要素は極めて重要であると言えます。
みなさんがこれまで読んだ小説をいくつか思い出してみて下さい。
ほとんどの作品が、大なり小なりあるものの恋愛要素が含まれているのではないでしょうか?
作家が登場人物を考える際にも、最初に主人公(この場合は男性とします)を考えたとしたら、次はヒロインという単語を思い浮かべる方が多いはずです。
そして主人公とヒロインが並んだら、どうしたって恋愛要素を取り入れたくなるのが人情でしょう。
作家も、もちろん読者もごく自然に小説における恋愛を受け入れ、何より欲しています。
これは人が、自分自身が恋愛したいと思うのと同じくらい、他人の恋愛を覗き見たいという欲求があるからです。
小説では様々な形の恋愛を表現できます。
キャラクター、世界観、ストーリーなどを絡ませれば、その要素は千差万別となります。それらを使いこなせたとしたら、多くの読者を魅了する面白い小説が書けるはずです。
しかしその多彩さ故に、読者を夢中にさせ、かつリアリティもある恋愛を小説で紡ぐのは極めて困難と言えるのです。
そこで当ブログでは小説における恋愛を考えていこうと思います。
今回のテーマは『愛情と友情』です。
愛情と友情は両立するのか?
愛情と友情に対する感性は男女で異なるのか?
そういったことを考えていこうと思います。
参考書:越智啓太(2015)『恋愛の科学 出会いと別れをめぐる心理学』実務教育出版
愛情の心理尺度
愛情や友情は心の機微によるものですので、どうしたって主観的になってしまうものです。
これをどのように客観的、つまり科学的に考えるかというと「心理尺度」というものを利用することになります。
心理尺度はその名の通り、心理的な要素を計るものさし(基準)となるものです。
愛情の心理尺度を最初に研究したのはルービンとうい研究者です。
ルービンは愛情(love)を測定する尺度を作成しようとしましたが、彼がもう一つ関心を持っていたのは、好意(like)という感情です。愛情と好意は必ずしも同じものではありません。そこで、彼は、愛情と好意の度合いを別々に測定するための心理尺度を測定しました。これをルービンの愛情ー好意(love-like)尺度といいます。
(17ページより)
このルービンの愛情ー好意尺度をさまざまなカップルにやってもらったところ、値が高いカップルほど、互いが結婚を考えていることや、二人きりのとき見つめ合っている時間が長いことがわかったそうです。
しかし海外と日本ではloveとlikeの認知に違いがあります。それを鑑みて、著者らはルービンの心理尺度に日本人の要素を加えた新たな心理尺度を作成しました。
それが『「愛情」「尊敬」「友情」の心理尺度』になります。
「好意」を、「尊敬」や「友情」といった要素に置き換えているようです。
日本人の感性は複雑なものですね。
この心理尺度は次のように測定します。
- 測定したい相手を一人思い浮かべる
- いくつかの質問に対し、どれくらい当てはまるかを7段階で答える
- その合計点を出す
この測定は本書に載せられており、自分の偏差値を出すこともできますので、興味のある方は実際にやってみて下さい。
ではこの尺度をもとに、男女の恋愛について見ていきましょう。
男と女で恋愛にのめりこみやすいのはどっち?
著者らの心理尺度をもとに考えてみます。
日本人の男女600人を対象に調査したところ、男女別の愛情尺度の平均値は以下のようになったそうです。
〈愛情尺度〉
男性→39.72
女性→37.58
男性の方が平均値が高くなっております。
この差は統計学的には優位とされるものだそうです。
つまり統計学的に見ると、男性の方が恋愛にのめりこみやすいということになります。
因みに、尊敬と友情の恋愛尺度の平均値は次のようになっています。
〈尊敬尺度〉
男性→39.85
女性→40.36
〈友情尺度〉(値が低いのは質問数が少ないため)
男性→26.40
女性→27.02
どちらも女性の方が上回っていますが、統計的に見るとこの差はないものとされるそうです。
愛情と友情は両立可能か?
本書では先ほどの3つの尺度をもとに、それぞれの相関係数を算出しています。
相関係数は、要は互いの関係の度合いを表しており、心理学では0.4〜0.6くらいあればある程度密接な関係であると判断されるようです。
それぞれ見てみましょう。
愛情↔尊敬 0.509
愛情↔友情 0.610
尊敬↔友情 0.552
先ほどの基準で考えると、どれも密接な関係にあり、特に愛情と友情の関係が深いようです。
これは、「一緒にいて楽しい」とか「一緒に遊びに行きたい」と思う気持ちがいつのまにか恋愛に転化してしまうという現象は、やはりある可能性が大きいということを意味します。
また、愛情と尊敬の間にも密接な関係があるということは、「とても信頼できる人」であったり、「人から賞賛されるような人」だと思う気持ちがやはり、恋愛に転化する可能性もあるということを示しています。(29ページより)
愛情と友情。混合しやすいのは男か女か
次いで男女どちらが愛情と友情を混合してしまいがちかを見てみましょう。
先ほどの愛情↔友情の相関係数を男女別に見ると次のようになります。
〈愛情↔友情〉の相関係数
男性→0.622
女性→0.617
数字上は男性の方が上回っていますが、この0.005という数字は小さすぎるため統計的な意味は持たないようです。
従って、著者らの分析では、愛情と友情を混合してしまう(友情を愛情に転化する)程度は男女同じくらいと考えられます。
(因みにですが、愛情と尊敬の相関関係についても男女での差異はほぼありませんでした。)
ですが、本書には著者たち以外の方が行った研究も載せられており、そちらの数値では男性の方が高くなったり、他方では女性の方が高くなったりしているため、一概には言えないようです。
やはり国民性含めた様々な条件があるのでしょうか?
おわりに
というわけで今回は男女における愛情と友情について学んできました。
小説の登場人物を考える際も、その人物の役割や性格はいろいろ思案できても、男女どちらにするかの2択には悩んだりしますよね。
一般的に主人公は作者と同性にした方が書きやすいとか、キャラ同士での恋愛を考えるとこっちは男性であっちは女性にしようだとか、そういった判断になってくると思うのですが、やはりもう少し思慮深くキャラづくりをしていきたいものです。
今回は、やはり友情は愛情に転化する可能性が高いということがわかりました。
まあ予想通りではありますが、こういったことも小説づくりに活かしたいいきたいですね。
具体的には、最初から愛情の物語にするのか、あるいは友情を愛情に転化していく物語にするのかといったところになってくるのでしょうか?
今後も恋愛と友情については学んでいきたいと思っております。
それでは本日も読んで頂きありがとうございました。