恋愛の形は人それぞれです。
その”それぞれ”を心理学の視点から見て分類してみましょうというのが本記事のテーマです。
もう少し具体的に言うと、愛情を3つの因子に分類したスタンバーグ氏の研究をご紹介しようと思います。
参考書は前回の”愛情と友情”の話に引き続き『恋愛の科学』になります。
参考書:越智啓太(2015)『恋愛の科学 出会いと別れをめぐる心理学』実務教育出版
「愛情」の3つの要素
心理学者のスタンバーグ氏は「愛情」を分類するにあたり、因子分析などの統計手法による研究を行ったそうです。
その結果、スタンバーグ氏は「愛情」を3つの要素に分類しました。
その3つの要素は以下のようになっております。
- 親密性→デートをしたり、語り合ったりといった行動から、信頼や繋がりを深めることで得られる感情。ゆったりとした落ち着いた愛情を意味します。
- 情熱→いわゆる「燃えるような愛」です。ドキドキするこことや、相手を独占したいといったことを望む感情で、性的な欲求もこれに含まれます。
- コミットメント→知的で冷静さを伴う要素で、一昔前の「お見合い結婚」がひとつの例となります。上記の親密性や情熱はないものの、慣習やメリットの面を考慮して結婚する、といった判断を下す感情です。
世間一般でのイメージに当てはめると、親密性は「愛」、情熱は「恋」、コミットメントはそのどちらでもない、といった具合でしょうか?
私の感想としてはコミットメントが愛情の要素に入るというのが意外でした。”知的”や”冷静さ”といった言葉は愛情とは結びつかないものでしたから。
ですが言われてみれば、恋愛ごとにおいて駆け引きや打算といったものはありがちなものです。
そういったことも考えると、コミットメントも愛情の一要素というのは頷けるのではないでしょうか?
さて、この「親密性」「情熱」「コミットメント」という3つの要素。
スタンバーグ氏はこれらを頂点にする三角形の形によって、さらに細かく「愛情」を分類しています。
その愛の三角形による分類図がこちら↓になります。
図は本書から引用しました(44ページ)。(色や番号など、見やすいよう多少手を加えてあります。)
では、それぞれ説明していきます。
- 完全な愛(CONSUMMATE LOVE)→親密性・情熱・コミットメント全てのバランス良く、大きな三角形。(図にはありませんが、この逆、つまりすべての要素が少ないものは「愛の非存在 (non-love)となります)
- 好意・友情(LIKING・FRIENDSHIP)→親密性のみが突出。愛情よりは友情よりの感情となります。
- のぼせあがり(INFATUATION)→情熱のみが突出。いわゆる恋に恋しているような状態。
- 空虚な愛(EMPTY LOVE)→コミットメントのみが突出。理性よりの感情。
- ぼんやりした愛(FATUOUS LOVE)→親密度のみが少なく、情熱とコミットメントで構成される感情。
- 友愛(COMPANIONATE LOVE)→情熱のみが少なく、親密性とコミットメントで構成される感情。
- ロマンティックな愛(ROMANTIC LOVE)→コミットメントのみが少なく、親密性と情熱で構成される感情。
3つの要素単体と、更にそれぞれが組み合わさることで7つに分類されるわけですね。
現在の日本人大学生のパターンは?
愛の三角形において、現代の日本人大学生のパターンを見てみましょう。
3つの要素を高い順に並べると男女ともに、親密度→コミットメント→情熱、といった具合になるんだそう。
これを見る限り、現代の若者は友達よりの恋愛観の人が多いようです。
これはアメリカの学生でも同様のようです。
本書で挙げられているのは日本とアメリカの学生のみでしたが、どういった条件によってこういった傾向になるのかは気になるところです。
私は小説家志望ですので、物語上の恋愛についても学びたいと思っております。
小説や映画、ドラマといった物語の上では、現実のデータとは違って情熱の要素が強い恋愛が多いように思われます。
そういった恋愛に需要があるということは、現代の若者も情熱的な恋愛に興味がないというわけではないのかもしれません。
おわりに
というわけで今回は愛情の分類として、スタンバーグ氏の愛の三角形についてお話ししました。
個人的には小説上での恋愛を考える際に、”恋愛”をひとくくりにせず、今回学んだ7つの分類も意識していこうと思う次第です。
今回の愛の三角形ですが、自分の恋愛を測定してみたいという方は、本書に尺度測定(簡易版)が載っておりますのでご利用頂ければと思います。
それではここまで読んでいただきありがとうございました!