僕は初心者のころ、毎日何時間もひたすら大好きな小説を模写していた時期があるので、今回はそれを踏まえて模写がはたして効果的なのかを考えようと思います。[/voice]
先に結論を述べてしまうと模写はあまりオススメしません。
厳密には、無思考で最初から最後まで模写するのは時間が勿体ない、と思います。
模写するにしても効果的に行う必要があります。
その理由や、僕がおすすめする方法をこれから説明していきます。
みなさんの作家としての今後に役立てていただければ幸いです。
小説を模写することの意味や効果とは?
まず、小説を模写することで得られる恩恵は、以下のようなものが考えられます。
- 小説の基本を学ぶことができる。
(行頭の一字下げ、括弧の使い方、三点リーダの使い方など) - 細かいレベルで作者の書き方(スタイル)を学べる。
(句読点の使い方、漢字とカナの選択、改行の使い方、語彙など) - タイピングの練習になる。
最大の利点は、一文字単位で作家さんの書き方を学べることでしょう。
ただ個人的には、一文字単位での学習は欠点にも繋がると思います。
一文字ずつ書き写すとなると、当然そのぶん時間がかかってしまい、以下のような欠点が生じます。
- 読んだときのリズムを感じにくい。つまり「読み味」を学ぶことはできない。
- 作品を俯瞰して見にくいため、ストーリーやプロットの学習には向かない。
- 作者の書き方を完全にトレースしてしまうため、自分の文体形成の弊害となる。
- とにかく時間がかかり、効率が悪い。
- 気を抜くと、ただ写すだけの無駄な作業になってしまう。
僕が実際に模写していて感じたのは、とにかく効率が悪いということです。
その上、作家に必須であるストーリー構成の学習には向いていません。
加えて、ちょっと気を抜くだけで、いつのまにか漫然と模写してしまいます。
当時の僕も模写することに満足してしまって、ただただ時間を浪費していました。
正直なところ、何も学びを得られていませんでしたね・・・
誤解を恐れずに言えば、模写するくらいならもっとやるべきことがあると思います。
小説の書き方を学ぶには、模写よりも「読書」が効果的です。
すべて模写しなくても、読書で十分に学習効果があるはずです。
ただし、漫然と読んでいるだけでは意味がありません。
大前提として作者の意図を考察するようにしながら読みます。
加えて以下の3つの段階にわけて読書することで、より効率的な学習に努めます。
- 黙読:基本的には作者の意図に注意しながら黙読します。
- 音読:特に印象的な部分や、ここは学んでおきたいと感じた部分は音読します。音読すると、文のリズムや構成などを、黙読より深く学べます。
- 模写:さらに重要と感じた部分があれば、ここで初めて模写します。このとき、ただ書き写すだけでなく、なぜここを重要と感じたのかや、自分なりの考察などを一緒に書いておきましょう。すると、学んだことが実用的な知識として身についていきます。
3の模写(ノートへの書き方)は以前書いた「ネタ帳」の記事が参考になりますので、そちらもぜひ読んでみてください。
[kanren postid=” 3300″]オーディオブックも利用するとさらに効果的です
オーディオブックだと、スキマ時間を利用して小説の腕を高めていくことができます。
小説の朗読を聴くので、視覚的な文章の勉強にはなりません。その一方、小説を耳で聴くことは文章のリズムや、会話文の調子などを鮮明に学ぶことができます。
僕自身、読書に加えてオーディオブックも取り入れながら、小説の勉強に日々励んでいます。
僕は一番好きな作家さんが冲方丁先生なので、『光圀伝』という時代小説をよく聴くのですが、もはや何度繰り返し聴いたかわかりません。
すると、いつの間にか自分の小説が「ここ、少し光圀伝の印象があるな」といった感じになってきました。
模写だけの学習だと文面まるごとトレースしたような文体になりがちですが、オーディオブックの場合は、文章まるごと覚えているわけではないので、あくまで自分のスタイルを保ちつつ、聴いていた作品の要素を取りこむことができます。
僕はAmazonのオーディオブック『オーディブル』を利用していますが、かなりおすすめなので利用してみてください。一ヶ月は無料体験可能です。
[kanren postid=” 2698″]模写はここぞというときに使うのがおすすめ。
目的意識を持ち、無思考にならないようにしましょう。
ということで、僕なりの結論は「小説の書き方を学ぶには、基本的に読書で十分。必要に応じて音読や模写も活用していくとより効果的」ということになります。
ただ、読書にしろ模写にしろ、漫然と行っているだけでは意味がないので、手段と目的を取り違えないように意識することが大切です。
「何をこの小説から学ぶのか?」という気持ちをぜひ忘れないようにしていってください!