大人になっても人見知りが激しく、それがコンプレックスになってしまっている方は少なくないと思います。
何を隠そう私自身が極度の人見知りです。
私は幼い頃から人と接することが苦手で、初対面の相手となるとこの性格が顕著に現れます。
向かい合って話していても、ほぼ聴き手役に徹し、相づちを打ったり愛想笑いを浮かべることで、なんとか会話を乗り切っているような有様でした。
まわりの人たちは当然のように感情豊かに自分を表現し、みるみるうちに人の輪をつくっていくのに、自分にはそれができない。
コミュニケーション能力に長けた人たちに羨望を覚えながらも、自分はこういう性格だから仕方ないと諦めたまま大人になってしまいました。
だから今もなお、私の人見知りは直っていません。
しかし今になって思うのは、性格だから仕方ないという考え自体が逃避行為だったのだということです。
だから私は現在、この性格を直そうと試行錯誤しております。
まだ劇的な変化はないものの、少しずつ自分が変わってきているのを実感しています。
先日職場で、こんなことがありました。
通りがかった先輩に私が挨拶をしたところ、目を丸くして驚かれたのです。
どうしたのかと私が尋ねると、先輩曰く「いや、いつになく朗らかだから……」とのこと。
(挨拶くらいはいつもしているのに、普段の私はどんな陰険な印象なんだろう……)と思ったのはさておき、多少は私も変われているのかな、と思わせてくれる体験でした。
長年人見知りをわずらってきた私でも克服の兆候が見られるのです。
ですから、私と同じ苦しみを抱えているみなさま、きっと私たちは望めば変われるはずです。
一歩踏み出し、一緒に頑張ってみませんか?
というわけで今回は人見知り克服するための科学的方法を5つご紹介しようと思います。
[toc heading_levels=”2,3″]参考書:アンディ・モリンスキー[著]、花塚恵[訳]2017『ひっこみ思案のあなたが生まれ変わる科学的方法』ダイヤモンド社
参考書について
今回参考にさせていただく『ひっこみ思案のあなたが生まれ変わる科学的方法』(以下”本書”とします)は、ブランダイス大学のアンディ・モリンスキー教授の著書です。
教授は心理学や組織行動学の教鞭をとると共に、ビジネスの現場における行動の変化や、異文化の交流を専門に研究なさっているんだそう。
本書はタイトル通り”ひっこみ思案”を克服するためのものです。
引っ込み思案について考察し、学習や成長、進歩する力を高次のものへ引き上げる術を、具体的な例や研究データと共に取り上げています。
今回はその中から、”人見知り”に関する部分にスポットを当てて、私が有効と感じたものをご紹介したいと思います。
(”ひっこみ思案”は”人見知り”とは厳密に同じものではありませんが、”人見知り”は”ひっこみ思案”の一種とでも思っていただければよろしいかと思います。これについては後ほど説明します)
ひっこみ思案と人見知り
はじめに本書でのひっこみ思案の定義を説明します。
キーワードとなるのはコンフォートゾーンです。
これについて本書から引用します。
「コンフォートゾーン」とは、自分が心地よいと感じる場所や、安心して行動できる領域を意味する。心地よいところから喜んで出る人はいない。しかし、世間では、コンフォートゾーンから出ないと「奇跡」は起きないといわれている。コンフォートゾーンの外に出れば、自分の許容範囲が広がるような、学習、成長、進歩が望める。
(はじめにより)
これはひっこみ思案全般についての記載であります。
つまりひっこみ思案とはコンフォートゾーンから足を踏み出すことのできない状態のことを指すのですね。
その原因は5つの葛藤であると本書では述べられていますので、その5つを挙げます。
- 自分らしさとの葛藤
- 好感との葛藤
- 実力との葛藤
- 憤りとの葛藤
- モラルとの葛藤
ひっこみ思案はこれらの葛藤が原因で起こるわけです。
しかし、今回のテーマは人見知りですので、この中から人見知りに深く関与していると思われているものを取り上げたいと思います。
私見で恐縮ではありますが、人見知りの原因となっている一番の原因は、好感との葛藤でしょう。
次点で実力との葛藤です。
その他の葛藤も決して無関係ではありませんが、私はこの2つが大きな原因であると考えます。
これらを簡単に説明すると次のようになります。
好感との葛藤→自分が行動するすることによって、相手に嫌われるのではないかと恐れる気持ちによって生まれる。
実力との葛藤→自分には十分な知識や能力がないと思うことによって生まれる。
以上のことから、本記事では人見知りの定義を「誰かと向かい合ったときに、嫌われたくないという思いや劣等感による自信のなさによって、コンフォートゾーンから出られなくなった状態」とします。
冒頭で「”ひっこみ思案”と”人見知り”は厳密に同じものではない」と述べましたが、ここでその違いをまとめておきましょう。
ひっこみ思案=コンフォートゾーンから足を踏み出すことのできない状態(その原因を対人関係に限らない)
人見知り=対人関係において、コンフォートゾーンから足を踏み出すことのできない状態
それでは次は、人見知りを克服するために、嫌われるという恐れと劣等感とを乗り越えてコンフォートゾーンから外へ踏み出すための方法を見ていきましょう。
人見知りを克服するための5つの方法
本書では引っ込み思案を克服するための方法を3つに大別し(信念・カスタマイゼーション・マインドリセットの3つ)、その具体的方法を多数紹介しています。
先ほど述べた通り今回はその中から、人見知りに効果的と思われる方法を、私の経験も交えて5つご紹介します。
さっそくその5つの方法を記載します。
- 目的意識を持とう!
- 魔法のカバンで気まずい時間とはさようなら!
- ラッキーチャームの力を借りよう!
- マインドリセットで自分を見つめ直そう!
- 自己暗示を効果的に使おう!
それでは早速、それぞれ説明していこうと思います。
1.目的意識を持とう!
まずは、自分が人見知りを直してどうなりたいのか、その目的を明確にしておきましょう。
そんなこと? と思った方もいるかもしれませんが、人は動機付けなしに行動することが困難ですので、実はこれが極めて重要です。
目的意識の重要さを証明すべく、本書では心理学者のアダム・グラント氏の調査を挙げています。
その調査とは以下のようなものです。
- 調査は奨学金のための募金活動を利用して行われました。
- ①ただ募金活動を行った場合と②募金活動者と奨学金を受け取る人とを引き合わせた後に活動した場合の2通りを比べます。
- 成果は圧倒的に②の場合の方が良かったそうです。活動者が電話で募金を頼む時間は2倍になり、募金額はなんと3倍まで増えたのです。
②の方が良い結果だったこと自体は、みなさんも予想通りだったと思います。
しかし、募金額3倍というのはみなさんの想像以上の成果だったのではないでしょうか?
このように、人間はちょっとした動機付けを行うだけで、大きく行動力を高めることが出来るのです。
私もいろいろ試している中で、結局は動機付けが一番有効だと感じています。
因みに私が人見知りを直したいと思うことの目的は、もっと人と広く深く関わることで、様々な情報を得て、さらに様々な感情を体験したいからです。
私はプロの小説家志望のワナビですので、情報を得ることと、感情を体験することが創作活動に繋がります。
これは私にとってとても強い動機ですので、この目的意識があれば好感の葛藤も実力の葛藤も些細なものに感じられるのです。
みなさんも今一度、どうして自分が人見知りを克服したいのかよくよく考えてみて下さい。
目的は人それぞれでしょう。しかし、その目的意識はきっとあなたの大きな力になってくれるはずです。
2.魔法のカバンで気まずい時間とはさようなら!
誰かと二人きりの時、会話が続かなくて気まずい思いをしてしまうという経験はありませんか?
人見知りの方にはあるあるだと思います。もちろん私も何度も体験しています。
これを防ぐ方法の1つが「魔法のカバン」を持つことです。
魔法のカバンと言っても特殊なものではありません。
みなさんのカバンに、話題のタネとなるものを常に入れておくというだけの方法です。
そもそも会話が続かないのは話題がないからです。
人見知りにとって、自分から話題を提供して話を広げていくというのはなかなか難しいものです。
しかし、話題となる何かが手元にあったとしたら? 加えて、それが自分の用意した、自分の好きなものであったらどうでしょうか?
勇気が必要とされることに変わりはありませんが、難易度はかなり下がるのではないでしょうか?
私の場合、カバンには常に何冊か本を入れてあります。
沈黙が気まずい状況に陥ったら、その中から相手と話の合いそうな本を選んで話題にします。
話すのが壊滅的な私ですが、本を読むのは好きなので、これでなんとか会話を続けることができるのです。
みなさんも、これについてなら私は語ることができるといったものをカバンに忍ばせてみてください。
こういった努力を続ければ、いつか小道具なしでも自然と話題を広げられるようになっていくはずです。
3.ラッキーチャームの力を借りよう!
チャームとはお守りのことです。
つまり幸運のお守りを持つことで精神的な不安を和らげようというわけです。
目的意識以上の精神論になりますが、これもまた科学的な調査が成されておりますのでご紹介します。
この調査はドイツ人の研究者が行い、『サイコロジカル・サイエンス』誌に掲載されたそうです。
内容は以下の通りです。
- ゴルフのパターを使って調査されました。(パターが選ばれたのはより神経を使うからです)
- 内容は至極単純です。①「あなたの使っているボールはラッキーボールです」と言われたグループと②何も言われていないグループとでパターの成功率を比較しました。
- 結果は①のグループがはるかに成功率が高かったんだそうです。
嘘みたいな話ですが、人間の心理というものは意外と単純なようです。
本書で挙げられている具体例は、スピーチの時にメモを持つことや、大事にしている指輪を嵌めるといったものです。
私は一時期、大好きで憧れているミュージシャンと同じ指輪をお守り代わりにしていましたが、最近は使っていませんでした。
一応とはいえ科学的に効果有りとされているのですから、また嵌めてみようかなと思います。
4.マインドリセットで自分を見つめ直そう!
マインドリセットについては本書から引用します。
コンフォートゾーンから出て行動するには、出るとっかかりとなるものがないといけない。〈略〉そのとっかかりとなるのが「マインドリセット」だ。思考を一度リセットして、ゾーン外のことを避けているという事実を認識し、どのように避けているのか、避けるのは極めて合理的な行動だとしてどのように正当化しているのか、といったことを明確に理解する必要がある。人は、コンフォートゾーンから出ないですむよう自分を守ろうとするところがある。マインドリセットは、自分のそういう部分への対抗手段だと思えばいい。〈略〉現状の自分をありのままに見つめ、本音の感情(恥ずかしいと思う感情も含む)と、ゾーンから出るのを避けるためにとっている行動をすべて洗いだすのだ。
(107ページより)
要はちゃんと自分と向き合おうというお話です。そうでないと私たちは一向に変われません。
私が人見知りを性格のせいにして逃避し続けていたのが良い例です。自分から目を背けていては一向に成長しません。
もし人見知りしてしまったときは、「今どうしてこんな感情になったのだろう?」と考える癖をつけて下さい。
そうやって自分自身を掘り下げていき、問題を洗い出して対策していくことで、少しずつでも変わっていけるはずです。
5.自己暗示を効果的に使おう!
最後の1つは自己暗示です。
またしても精神論ですね……
しかし、これも有効そうなので仕方ありません。
やることは簡単です。
「できる」と自分に言い聞かせましょう。
ただ、このときポイントがあります。
一人称(主観)でなく、三人称(客観)で言い聞かせるのです。
つまり、「私はできる!」ではなく、
「○○(あなたの名前)はできる!」と言い聞かせるのです。
これに関しては次のような研究が行われています。
ミシガン大学の心理学教授イーサン・クロス氏による研究です。
- 対象となるのは89名の男女。
- 「夢だった仕事に自分がふさわしい理由」を語る原稿を書いてもらい、実際にスピーチしてもらいます。
- 原稿を書く際に、①半数には一人称(私など)で書いてもらい、②もう半数には自分の名前で書いてもらいました。
- ②の自分の名前で原稿を書いたグループの方が、不安が少なく自信を持って取り組むことができ、さらにスピーチも①のグループよりも上手く行えたそうです。
本書では次のように述べられています。
自分に向かって語りかけるときは、緊張する場面や難しい状況である場合はなおのこと、自分を第三者として少々心のなかで区別するだけで、自信がつき、事実を認識できるようになるという。
(114ページより)
重要なのは自分を客観的に見る(距離を置いて見る)ことで、冷静になることができるということです。
私もそうなのですが、人見知りの方は主観的に物事を見過ぎな傾向にあると思います。
私たちが思っているほど、人は私たちの挙動言動を逐一観察していません。ある程度の楽観視も大切なのです。
おわりに
人見知りは必ず克服することが出来ます。
今日ご紹介した内容は、精神論的な要素が多く、もしかしたら肩を落とした方もいるかもしれません。
しかしこれが現実なのです。長年培ってきた人見知りを手軽に克服する方法などありません。
とはいえ、逆に考えてみて下さい。私たちは気持ちの持ち方ひとつで確実に変わっていくことができるのです。
日々努力を重ねていけば、私たちの未来は少しずつでもより良いものへとなっていきます。
今回は人見知りを克服する方法と共に、科学的に行われた調査や研究も併せて挙げてきました。
これもひとつの暗示になればと思ってのことです。
今回ご紹介した方法はいくら精神論に思えたとしても、科学的に効果があることが立証されています。
ですから、そういう意味でもこれからは自信を持ってこれらの方法を有効活用していただければと思う次第です。
今後も良い方法を見つけたり、あるいは生み出せた際には記事にさせていただくので、また読んでいただけると嬉しいです。それでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました!