小説家はゼロから世界と人物、そして物語を生み出します。
そしてこれらは架空とはいえ、血の通ったもの(あるいはそう見せるもの)でなければなりません。
0から1を生み出すことの苦しみは、創作的な試みをした経験のある方なら分かって頂けると思います。
しかし厳密に言えば、何もない場所から作品が生まれることはないはずで、僕たちはこれまでの経験と思考とを基に新たなモノを創造しているはずです。
それっぽい言い回しをするのであれば、経験による”インプット”を昇華し、作品という”アウトプット”を行っているのです。
つまり良質なインプット無くして良い作品は生まれません。
今回のテーマは作家としての知識を蓄えるための”インプット”。
『脚本を書くための101の習慣』からプロの脚本家の意見を見ていこうと思います。
(脚本家たちの意見とはいえ、小説家のみなさんにも大いに当てはまるはずです!)
プロ脚本家の知識を蓄えるための”インプット法”
さっそく見ていきましょう。(括弧内の作品名は、脚本家の代表作です)
スティーブン(ダイ・ハード)
新聞の切り抜きとニュースサイトの観覧でインプットするそうです。
新聞の切り抜きのポイントは興味を覚えたものを、後で役立つかは気にせず、いつも欠かさずリサーチすること、だとか。
僕は気になったことはノートに書くようにしているのですが、ノートに書き写すとなると結構時間がかかるんですよね……。
切り抜きであれば手間がかからず、後から見返しやすいので良さげな方法です。
ただ、ノートに書くことにも利点があります。それは、広大なスペースに自分の意見や感想も併せて書いておけることです。
なにかに興味を抱いたとき。その瞬間の自分の考えを残しておくことは大切です。
今回の方法のように、新聞を切り抜くのであれば、一言でも感想を書き込んでおくか、それさえ面倒であれば気になった箇所に線を引いておくだけでもより効果的ですね。
エイミー(星に願いを)
新聞が情報源。本当にあった話を調べると、驚くようなことがたくさんあるとのこと。
ポイントは”驚くことがたくさんある”ことでしょうか。
驚くということは興味を抱いているということですから、そういう好奇心は創作に繋がりやすいです。
先ほどの”新聞の切り抜き”でも興味を覚えたものを選ぶのがポイントでした。
やはり創作家たるもの好奇心を大切にしていかなければならないようです。
スコット(60 セカンズ)
読書もするが、何より映画はたくさん見るべきという意見です。
僕はあまり映画を観ないのですが、小説家も映画を見て学ぶべきだよなとは思います。
視覚や聴覚をフルに活用する物語を見て、それを小説だったらどう表現するかと考えながら見るだけでも勉強になります。
それから、僕は会話文が苦手なので、映画の中での会話から、言い回しや雰囲気、間の取り方などを学べたらなとも思います。
書いていたらますます映画を見るべきと思えてきました……。
僕ももう少し映画を見ていくようにしたいと思います。
トム(ムースポート)
フィクション・ノンフィクションを問わず、新聞や雑誌、インターネットなど何でも読むとのこと。
でも一番大事なのはフィクションを読むことだそうで、
理由はよくわからないが、フィクションを読まないと良い具合に書けなくなる。
(94ページより)
とのことです。
”理由はよくわからない”とは正直だなと思いましたが、この意見には僕も共感しました。
僕もフィクション作品を読んだ方が、創作のモチベーションが上がるタイプです。
同じく理由はよくわかりません。(作品の裏側にいる作者ありきで、作品に触れているからかなとは思います。)
ロビン(マチルダ)
物書きという職業は、創作の心が枯れないように常に文化的な物事を吸収しなければいけません。そして、パジャマを脱ぎ捨てて、無理やりにでも自分を外の世界に連れ出して、普通の人がやることを他の人たちと一緒にやるんです。人間というのは自分の経験の中にしか書く素材を見つけられないから。自分の心の中、そして自分の心に火を点けたものに加えた独自の解釈の中にね。何にでも興味を持ちましょう。ボランティアで何かやるのもいいし、ともかく”世の中”に関わるのです。”書く”という行為はあなたの一面に過ぎません。でも、あなたの人となりこそが、あなたが書けるものを決めるのです。
(94ページより)
これに関しては原文のまま読んで頂きたかったので、そのまま引用させて頂きました。
どこを拾っても重要なことが述べられていて、僕は感動すら覚えながら読みました。
これまで見てきたインプット法は新聞や本やネット、映画など第三者の経験を間接的に得ようとするものでした。
しかしロビン氏が述べているのは、直接的な経験をもっとしようということで、引用中にあるとおり自らも”世の中”に関わることを重要視しています。
作家は世界を外側から見がちですが、自らも世界に生きなければならない一人という気概無くして良い作品は生み出せないのかもしれません。
おわりに
僕のインプット法は、本を読むことが大部分を占めています。
本を読み、そこから間接的に得た経験から思考して、作品にアウトプットする。
正直この方法だけで良いと思っていました。
しかし今回、プロの脚本家方の意見を目にして、映画や新聞ももっと利用しなければならないと感じました。
そしてなにより、ロビン氏が述べていた”世の中”に関わることを大切にしていかねばと強く思います。
現実逃避の先に作品を生み出すのではなく、誰よりも世界に生きる一人として作品を生み出せたら最高だなと思う次第です。
みなさんも自分なりのインプット法を見つけて頂ければ幸いです。
それではここまで読んで頂きありがとうございました!