人を動かすための3カ条は小説にも使えそう。ロゴス・エトス・パトス

「ロゴス」「エトス」「パトス」という言葉をご存じでしょうか?
恥ずかしながら私は初めて耳にしました。

これは哲学者アリストテレスが著書『弁論術』にて述べた、人が納得して動くために必要な3つのことです。

これについて今回の参考書『武器になる哲学』で易しく解説されているのですが、小説を書く上でも重要そうでしたのでご紹介しようと思います。

参考書:山口周『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』

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説得より納得、納得より共感

人の行動を本当の意味で変えさせようと思うのであれば、「説得よりは納得、納得よりは共感」が求められます。

『武器になる哲学』58ページより

小説を書く人であれば、読者の共感を得ることがいかに重要で難しいかをご存じと思います。

かくいう私も、共感してもらえる作品作りを目指してはいるのですが、これがなかなか上手くいきません。
私の場合はどうにも形式張ってしまうというか、上っ面だけのものになってしまいがちというか、「これじゃ読者は感情移入できないな……」という場面になってしまうことが多々あります。

『武器になる哲学』(以降”本書”とし表記します)で述べられている、共感>納得>説得という図式は大いに頷けるものでしょう。
説得は与えられるもので、納得は自発的なもの。そして共感は外部(小説)に自分を重ねた上での自発的なものです。

小説の読者において、どれが好ましいのかは言うまでもありません。

それでは共感を得るために必要な要素とは何なのでしょうか?
その極意を今回のテーマ「ロゴス・エトス・パトス」(なんだか呪文みたいですね)という人を動かすための3カ条に見ていきたいと思います。

ロゴス・エトス・パトスとは?

冒頭でお話ししたように、ロゴス・エトス・パトスはアリストテレスが著書『弁論術』で述べたものです。

”3カ条”というワードからすでに察している方もみえるかもしれませんが、「ロゴス」「エトス」「パトス」はそれぞれ独立した3つの言葉で、これが人を動かすために必要な要素なのです。
(本書では”人の行動”を変える要素として述べていますが、”小説で人を感動させる”こともこれに含まれると私は解釈しています)

結論から述べてしまうと、
ロゴス=ロジック(論理)
エトス=エシックス(倫理・道徳)
パトス=パッション(情熱)
の3つの要素が重要なんだそうです。

つまり私たちが目指すべき小説は論理的かつ倫理的・道徳的かつ情熱に溢れた作品であるべきということです。

「ロゴス」論理的に書きましょう

論理的というと小難しいといったイメージが先行し、共感とは対極にあると思われがちです。

しかし想像してみてください。いくら多彩な表現に溢れ、情緒ゆたかな作品であったとしても、ストーリーに矛盾があったり登場人物に一貫性が無かったりしたら読者は一気に冷めてしまうでしょう。

共感を得るためには、やはりその土台としての論理が大切なのです。

感情的になりたいくせに論理も重んじるのですから、人間という生き物は難しいですね。しかしだからこそ、追求していく価値も生まれるのではないでしょうか?

「エトス」倫理的・道徳的に書きましょう

性善説・性悪説をご存じでしょうか?
人は生まれながらにして”善”なのか、それとも”悪”なのかという問題です。(どちらにせよ人生の中で”善”も”悪”も体験し、学んでいくことになるので結局人間は”善”と”悪”の二面性を持つことになるのですが)

”善”たる故に”悪”に染まるのか。それとも、”悪”たる故に”善”を学ぶのか。
しかし人間の本性がどちらであれ、その間には倫理観や道徳観といったものが生まれます。

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本書では次のように述べられています。

人は、道徳的に正しいと思えること、社会的に価値があると思えるものに自らの才能と時間を投入したいと考えるものであり、であればこそ、その点を訴えて人の心を動かすことが有効であるとアリストテレスは説いているわけです。

『武器になる哲学』59ページより

人は正しいと思えることを求める生き物です。
ですから、そこを考慮して小説を書くことも重要です。

「パトス」情熱に溢れた作品を書きましょう

共感を得たいと考えたとき、これがいちばんイメージしやすいのではないでしょうか?

論理や倫理が大事とは言ってきましたが、やはり人間は感情的なものであり、そういう部分に惹かれるものです。

私たちは書きたい物語があって書くのですから、そこに情熱を込めるのは難しくないはずです。
当然、独りよがりな情熱を込めても読者には届かないわけですが、それを防止してくれるのが論理であり倫理なのかもしれません。

Cool Head,but Warm Heart.(冷静な頭脳で、しかし暖かい心を持とう)とは経済学者アルフレッド・マーシャルの言葉です。

これは小説を書く上でも大いに当てはまると思います。
みなさんもこの言葉を意識して作品作りに挑んでみてはいかがでしょうか?

おわりに

ということで今回は人を動かす(共感させる)ための3つの要素「ロゴス・エトス・パトス」についてお話しました。

言われてみれば当然のことばかりではあるのですが、本当に普段からこれらを意識しているかと問われると怪しいものです。
これらを改めて意識するだけでも、よりよい作品づくりに繋がるのではないかと思います。

私個人としては「ロゴス(論理)」と「エトス(倫理)」に関しては割と意識して書けていると思うので、もっと「パトス(情熱)」を前面に出していけるよう努力していこうと思う次第です。

みなさんの作品にも上手く活用していただけたら幸いです。
それではここまで読んで頂き、ありがとうございました!

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