小説の戦闘シーンって難しいですよね。一生懸命書いているのに、のっぺりした印象になってしまったり、そもそも読者に伝わるような動きを書けなかったり・・・。
そこで今回は、戦闘シーンを書くときに考慮すべきことを4つに絞ってご紹介します。これを意識するだけでもかなり変わってくるはずです!
戦闘シーンの考え方としては、以下の4つが大切です。
- 何のための戦闘シーンなのかを考える。
- 目的に合わせた文体を選択する。
- 動きを想像しながら、もしくは自分が戦っているイメージで書く。
- 視覚的な動き”以外”を意識して書く。
それぞれ詳しく解説していきますね!
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《小説戦闘シーンの考え方①》
何のための戦闘シーンなのかを考える。
まっさきに考えるべきは、この戦闘シーンが何のためにあるのかということです。
すべての戦闘シーンを、無思考で同じように書くのはオススメしません。
具体的には以下のようなことを考えてください。
- この戦闘シーンがストーリーにどういった影響を与えるのか?
- この戦闘シーンで開示される情報は何か?(例:主人公の強さ、心情、現状。その世界での戦闘スタイル。など)
- 戦いの結果どうなるのか? 勝つのか負けるのか。そしてそれによって何が変わるのか。
何を見せるための戦闘シーンなのかを念頭に置くだけでも、書き方が変わってくるはずです。
《小説戦闘シーンの考え方②》
目的に合わせた文体で書く。
①で戦闘シーンの目的を明らかにしたら、その目的を一番効果的に達成できる文体を考えます。
基本的に戦闘シーンの文体は、他のシーンの文体とは変えた方が効果的です。
他のシーンと同じように書くと、メリハリがなくてのっぺりとした印象になりがち。
もちろん①で決めた目的によって変わりますが、戦闘シーンは勢いがあったほうが読者をハラハラドキドキさせられます。
お手軽なのは短い文章で、体言止めを活用しつつ書くことなので、いきなり文体と言われても難しいという人は、短く分かりやすい文体を意識してみてください。
一例として僕が書いた小説の戦闘シーンを載せておきますね。
前のめりにカガツキの懐に飛び込み、刀を右上空へ振り上げる。
カガツキが一歩引いた。切っ先が、顎先ぎりぎりの空を切る。
ノエルは空振った勢いそのままに一回転。宙で身体をねじって力を蓄えている。一連の流れで回し蹴りへと移行していた。
カガツキの顔面へ放った踵はしかしカガツキの腕に防がれる。そのまま足首を掴まれてしまう。
「——っ!!」
思わず顔を歪めた。
足首の骨が軋んで悲鳴を上げている。加減されていても獣人の握力で握られれば、ヒトの身体では耐えきれない。
状況描写のために多少長くなっている部分もありますが、句点(。)を多く入れるよう意識して書いています。
《小説戦闘シーンの考え方③》
動きを想像しながら、もしくは自分が戦っているイメージで書く。
小説を書くとき、頭に絵が浮かんでいるタイプの人と、あくまで文章だけで書くタイプの人がいると思います。
僕は残念ながら想像力に乏しいのか、大半のシーンで絵がほぼ浮かんでいないのですが、こと戦闘シーンにおいては、可能な限り鮮明に想像するようにしています。
というのも戦闘シーンは必然的に動作の描写が多くなるので、一歩間違えると矛盾した描写をしてしまいがちです
例えば、剣と盾を持って戦っていたのに、熱中して書いているうちに「両手で剣を振るった」みたいな描写をしてしまったり・・・。
これは戦闘シーン以外でも起こりうることですが、戦闘シーンでは特に注意を払う必要があります。
僕のように想像力に乏しいという人は、自分が戦っているつもりで書くのがおすすめです。
自分が登場人物の視点で戦っているイメージで書くと、矛盾なく書ける上、描写にも躍動感が生まれます。
(少々恥ずかしいのでここだけの話ですが、僕は複雑な動作を書くときには、実際に自分で動きを再現してみたりもします。部屋でひとり、怪しい動きをしている人になってしまいますが、かなりおすすめの方法です。笑)
それから、戦闘シーンが魅力的なアニメを観るのはかなり勉強になります。
アニメの戦闘シーンを楽しみつつ、そのシーンを自分ならどう描写するかを考えるだけで自然と戦闘シーンの描写力が鍛えられていきます。
もしアニメで戦闘シーンの勉強をするなら、動画配信サービスを利用するのがおすすめです。
最近はかなりの量アニメが見放題ですし、いつでもスマホで手軽に観られます。
《小説戦闘シーンの考え方④》
視覚的な動き”以外”を意識して書く。
迫力ある戦闘シーンを書こうと思うあまり、陥ってしまいがちなのが視覚的な”戦闘の動き”だけを描写してしまうことです。
戦闘シーンを書く以上、もちろん動きが最重要なのは間違いありませんが、小説読者からすればそれでは物足りません。
誤解を恐れずに言えば、動きだけならアニメや映画を観た方が絶対に迫力があるし、文字通り一目瞭然でわかりやすいはずです。
僕たちは小説家なので、小説にしかない強みを生かしましょう。
- 戦っている人物の心情
- 戦いによる高揚や悲壮が読者に伝播するような描写
- 視覚以外の感覚の描写(剣を握る感覚、鍔迫り合いの感触、血の臭い、高鳴る心臓の音、身体を巡る激しい血流など)
見たままの事実を書くだけなら誰にだってできます。
みなさんだけにしか、そしてその作品にしかない表現で、魅力的な戦闘シーンを描いてみてください。
ちなみに、以下の描写は僕が最近書いた戦闘シーンです。
——負けるか!
痛みでむしろ戦意が加速した。ノエルはそうするほど頭がよく回る。
刹那の状況判断。刀を振るうには距離がない。できれば右の義手で殴りつけたい、が体勢が悪い。
——左で殴る
左手で持っていた刀を右手に持ち替え、全力を乗せて左拳をカガツキへ叩きつけた。
僕は普段、心の声を書くときは定石通り括弧()でくくるのですが、このシーンでは——(ダッシュ)で刹那の心情を描写してみました。
戦闘シーンの心の声って”思考”というよりは、もっと感覚的なものだと思ったのでこんな表現を使ってみたわけです。
これを読者がどう受け取ってくれるかはわかりませんが、こんな感じで色々試しつつ、みなさんも腕を磨いていっていただければと思います。
小説の戦闘シーンの考え方を4つご紹介しました
今回は小説の戦闘シーンを書くにあたって、僕が大切と思っていることを4つほど紹介させていただきました。
もちろん一番大切なのは、戦闘シーンの様子が上手く読者に伝わることです。
しかしその上で、今回紹介した考え方も意識して、より迫力があり、かつ小説に魅力と深みを与える戦闘シーンを書けるようになっていってくださいね!
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