小説の「視点(人称)」を種類別に解説します【作品に合わせた書き方】

[voice icon=”https://izenkei.com/wp-content/uploads/2019/01/fd261bfb4bc7e62020d86679888512ec-20190111224533.png” name=”葛史エン” type=”l”]小説を書き出す前に必ず決めなければならないことの一つに「視点人称」があります。今回はその種類と、それぞれの特徴を解説していきます。[/voice]

小説における視点は「誰の立場から書くか」で考えると理解しやすいです。
常に「この描写は誰が行っているのか」を意識しないと視点がずれてしまい、読者を混乱させることに繋がってしまうので注意してください。

種類としては「一人称視点」「三人称視点」の2つ。
さらに、上記2つの視点の「ハイブリッド」もあります。
(一応「二人称視点」というものも存在しますが、使い勝手が悪く、効果もかなり限定的なので一般的には利用されません。今回は割愛させていただきますね。)

それでは、それぞれ例文を挙げつつ解説していこうと思います。

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小説の「視点(人称)」を種類別に解説します

ネットの無料画像を探していたらこんなものを発見しました。↑
なかなか味のある画像で一目惚れです。笑
この画像を描写する形で、まずはそれぞれの視点人称の概要を解説していきます。

以下は僕が勝手に決めた、画像中の2人の子供の設定です。

[box class=”glay_box” title=”写真の子を勝手に設定付け”]

①シュートしている子
名前:アイン
自分を何と呼ぶか:オレ

②キーパーの子
名前:ツヴァイ
自分を何と呼ぶか:僕

[/box]

小説の「視点(人称)」①:一人称視点

一人称視点は、「オレや僕や私」のように一人の人物の視点から語られる形式です。

写真の場合は2人の登場人物がいるので、どちらかに視点を置くことになります。

①「シュートしている子」の一人称視点

[aside type=”boader”]

オレはボールの落下地点に陣取って、シュートの体勢に入った。
落ちてくるボールがゆっくりに見える。いいぞ、集中できている証拠だ。

ツヴァイの様子を窺うと、あちらも既に迎撃態勢のようだ。
どうせなら驚かせてやりたい。いつものスカした表情を崩してやる。

オレはタイミングを見計らって大きく跳ぶと、空中で身体を横倒しにしながらアクロバティックなシュートを放った。

[/aside]

すべて「オレ」が感じたことや、考えたことのみで書かれています。

また、他者の呼称も、その人を「オレ」がどう呼んでいるかになります。
今回はキーパーの子を「ツヴァイ」と呼び捨てていますが、ふだん ”くん付け” で呼んでいるのであれば「ツヴァイくん」となるわけです。

②「キーパーの子」の一人称視点

[aside type=”boader”]

落ちてくるボールをアインくんが見上げる。その顔に、にやりと笑みが浮かんだのを見て、僕は思わず身構えた。
アインくんが、何かするつもりだと思ったのだ。

案の定、アインくんは大きく跳躍すると、空中で猫のような撓りを見せて曲芸じみたシュートを放った。

[/aside]

シュートしている子の視点とはまた違った雰囲気になっているのではないでしょうか。

自分の呼び方が ”僕”であったり、 相手を ”くん付け” にしたりする部分に性格が出ています
また、 ”猫のような撓り” といった表現も独自のものです。

このように一人称視点では「その人の語彙や表現方法」で書くことを意識しましょう。

小説の「視点(人称)」②:三人称視点

続いて三人称視点です。
特定の人物に視点を置くのではなく、その場を俯瞰する視点で書きます
「神の視点」なんて呼ばれ方もしますね。

 

[aside type=”boader”]

霧の立ちこめた森の中に湿地帯が広がっていた。

その浅瀬で、二人の少年がサッカーをしている。
夕日を照り返す水面に、粗末な棒きれで組み立てたゴールをつくり、一人がそれに向かってボールを蹴り、もう一人がキーパーとなって守っていた。

まさに今、シュートの体勢に入ったのがアイン。
来たるボールを防ぐために両手を広げたのがツヴァイだ。

アインは落ちてきたボールに調子を合わせ、大きく跳躍すると、片手を水面に残しながら支えとし、横倒しになった体勢のまま鋭いシュートを放った。

[/aside]

登場人物の視点ではなく、画像の光景を俯瞰で眺めている ”誰か(神)” が描写しています。

情景や自分の行動などを客観的に描写ができるのが強みです。
また、登場人物の知り得ない情報なども書くことができるので、ストーリーも進行しやすくなります。

小説の「視点(人称)」③:ハイブリッド型の視点人称

直接的な心情描写ができる一人称視点の強みと、幅広く客観的な描写や解説ができる三人称視点の強みを掛け合わせた、ハイブリッド型の視点もあります。

2種類です。
それが「三人称一元視点」「三人称多元視点」

”三人称” という名を冠しているように、基本的には三人称で書きます
しかし部分的に一人称的な描写も書くことが可能。

実際に書いてみましょう。

三人称一元視点

「三人称+1人の登場人物の一人称」で書きます。
例としてキーパーの子(ツヴァイ)の視点で書いてみましょう。

[aside type=”boader”] アインが落ちてきたボールに合わせて大きく跳んだ。
ツヴァイは思わず身構える。何をするつもりだろう、と思考を巡らせながら先を見守った。[/aside]
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基本的には三人称ですので「アイン」や「ツヴァイ」といった呼び方で書いています。

そしてお気づきかも知れませんが、上記の描写はすべてツヴァイから見たアインのものです。
三人称のときは視点が俯瞰でした。イメージとしてはカメラが遠くにある感じです。
しかし今回の三人称一元視点では、カメラがツヴァイの背後にあるイメージで書いています。

加えて、「何をするつもりだろう」といったツヴァイの心情描写も書くことができています。

このように、1人の人物に視点を置いて一人称的にイメージしつつも、基本的には三人称の文体で書くのが三人称一元視点となります。

三人称多元視点

「三人称+全ての登場人物の一人称」で書きます。

[aside type=”boader”] アインは膝を曲げ、落ちてきたボールに合わせて跳躍した。一瞬の浮遊感に愉悦し、鼓動が高鳴る。
何をするつもりだろうと不思議に思っていたツヴァイは、次の瞬間に理解することになる。アインが空中で身体を横に倒し、そのままシュートを放ったのだ。[/aside]

前半部分はアインの背後にカメラがあり、後半部分はカメラの位置がツヴァイの背後へと切り替わっています。
カメラの移動に合わせて、心理的な描写もそれぞれ移っているのが分かるでしょうか?

このように三人称多元視点では、三人称的な文体で書きつつ、カメラ(視点)の位置は次々と切り替わっていきます
この書き方は十分に配慮しないと、今どこに視点があるのか、誰の心情描写なのかが曖昧になってしまうので、ある程度の技量が必要になってきます。

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小説にどの視点(人称)を選択すべきか?

視点は作品に合わせて選択すると良いかと思います。

個人的には「一人称視点」か「三人称一元視点」がおすすめです。
視点がぶれにくく、初心者でも書きやすいですから。

より感情的に書いて読者に感情移入させたいなら「一人称視点」が向いていますし、凝ったストーリーや設定を描きたいなら「三人称一元視点」が向いています。

僕の場合はストーリー重視、かつ感情的にも書きたいので必然的に「三人称一元視点」で書くことが多くなっています。

慣れてきて、「一人称視点」や「三人称一元視点」では自分の作品を表現できないと感じたときには、他の視点にもぜひ挑戦してみてくださいね。

小説における視点変更と視点移動は「基本的にナシ」

一人称視点や三人称一元視点では、特定のキャラの視点から書くことになります。

ここで一つの疑問が浮かびます。
「キャラの視点は途中で変わっても良いのだろうか?」

結論としては「基本的にナシ」。
でも、「ちゃんと考えて使うならアリ」です。

小説の視点変更・視点移動が「基本的にナシ」な理由

2つの理由があります。

1つ目は、読者が混乱するからです。

Aの視点でずっと書かれていたのに、突然Bの視点になると、読者はしばらく気付かず読み続けてしまい、どこかのタイミングで「ん?」と違和感を覚えることになります。

こういったことが何度も起こったり、さらにCやDといったキャラの視点まで出てきてしまっては何が何だか分からなくなってしまうわけです。

2つ目は、読者の「感情移入」に関する問題。

読者はキャラに感情移入したいものです。
一人称視点や、三人称一元視点の強みは、特定のキャラ(大抵は主人公)の心情を深く描くことで、読者に感情移入してもらえることです。

視点をころころと変更・移動してしまうと、その効果が薄れてしまいます。
一貫してキャラに感情移入してもらうためにも、視点は変えないのが無難でしょう。

とはいえ、小説の視点変更・視点移動が効果的な場合も・・・

一人称視点や三人称一元視点にも弱点はあります。

その一つが、ストーリー上のギミックを制限してしまうこと。
例えば「伏線を書くために他キャラの心情を書きたい」「書きたいシーンがあるけど、どうしてもその場に主人公(視点保有者)を配置できない」といった具合です。

ですが、視点の変更・移動を上手く活用できれば創作の幅はぐっと広がります。

その際は以下のような工夫すると良さげです。

[aside type=”boader”]
  • 主要人物二人で交互に視点を変える。
  • 章ごとに視点を変える。
  • 一人称の文体や言葉選びは、視点の保有者によって明確に変える。
  • 一人称文体と、三人称一元視点を混ぜて視点が変わったことを読者に分かりやすくする。
[/aside]

上記以外にも色々な工夫ができると思うので、ぜひ作品に合った書き方をしてみて下さい。

まとめ:結局のところ小説にルールはない

今回は小説の視点(人称)の種類を挙げ、それぞれ例文で解説してきました。

  1. 「一人称視点」→特定の人物の視点で書く。感情的に書きやすいが、その人物の知らないことは書けない。
  2. 「三人称視点」→俯瞰(神の視点)で書く。あらゆる描写を客観的に行えるが、淡々とした印象になる。
  3. 「三人称一元視点」→基本的に三人称で書くが、特定の人物に視点を固定する。主観性と客観性を備えた万能型の視点。
  4. 「三人称多元視点」→基本的に三人称で書き、視点はその都度移動する。あらゆす人物の視点に立てるが、読者を混乱させやすいため、配慮と技量が必要となる。

いろいろ書いてきましたが、結局のところ小説は「読者に効果的に伝われば何でもOK」が唯一のルールだと思います。
あまり細かい事を気にしすぎず、楽しみながら書いていただけたらと思います。

とはいえ、好き勝手書いていては読者に伝わる小説が書けないのも事実ですので、最低限の知識として今回解説したことも頭の片隅に置いていただけたら幸いです。

最後まで読んで頂き誠にありがとうございました!

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