【あらすじ&感想】『魔女と少女の愛した世界』孤独な二人の行く末は?

浅白深也先生の『魔女と少女の愛した世界』を読んだので感想やあらすじ、おすすめポイントなどを書いていこうと思います。

一見残忍な美しい魔女と、そこに転がり込んできた純真無垢な幼子が絆を繋いでいく心温まるお話。

何かと理由をつけながらも結局は幼子の世話を焼いてしまう魔女。そして、健気に魔女を慕う幼子。
そんな二人の不器用なやり取りに癒やされること間違いなしの作品です!

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『魔女と少女の愛した世界』のあらすじ

魔女と少女の愛した世界

魔女・エリシアは町外れの森に住んでいます。
魔女であることは秘密にし、時折町を訪れながらも独り静に暮らしているエリシア

そんなある日、町から帰宅したエリシアは我が家に侵入者を発見します。
侵入者の正体は人間の幼子

三歳くらいだろうか。お尻の辺りまで伸びた金色に輝く長髪に、澄み渡る空を映したような青色の瞳。
汚い服装や裸足であることを見るかぎり、身寄りのない孤児か、はたまた捨て子といったところか。急な悪天候に避難してきたのだろう。なぜ、こんな人気のない森を彷徨っていたのかは謎だが。

『魔女と少女の愛した世界』10ページより

エリシアは幼子をどうしようか悩んだ挙げ句、家事を手伝わせる奴隷にすることを決意

さっそく幼子が侵入した際に汚した床を掃除させるエリシア。
しかし幼子は汚れた足のまま掃除を行い被害は拡大。

しかも当の本人は額の汗を腕で拭って、いかにもやり切った感を醸し出しているのだから余計に腹が立つ。
が、私の落ち度でもある。いや、やはり腹立つ。

『魔女と少女の愛した世界』12ページより

本作はエリシアの一人称視点で語られますが、上記のような葛藤が頻繁に描かれます。
傍目には愛らし幼子の姿を、理知的かつ完璧超人な魔女・エリシアの目から見られるのもこの物語の魅力の一つです。

そんな中、エリシアの元を訪れたのはリオールという名の旧知の魔法使い。

リオールから「幼子が大金で売れる」と聞いたエリシアは、幼子をお金に変える計画を即決

ただし買い手を探すには時間がかかる上、その間、幼子の健康を保ち、さらには教養を付ける必要があるとのこと。
自分が幼子の世話を焼くのは面倒と思うエリシアでしたが、大金と天秤にかけた結果、しぶしぶ最低限の世話はことはすることに決めます

  • 幼子に「エリシアさま」と呼ばれて満更でもない感情を抱いたり
  • 字を教えるためと自ら絵本の読み聞かせを行ったり
  • 町で催される親子のイベントに参加し、歌や絵、料理を実の親子のように習ったり
  • 大好きなロールケーキを食べるために一緒に町へ足を運んだり

「商品価値を上げるため」を口実に微笑ましいイベントを二人でこなしていくことになります。

幼子の名前も ”カナリア” と自ら決め、(本人はあくまで認めませんが)段々とカナリアへの愛着を深めていくエリシア。

いよいよカナリアの買い手が決まったとき、エリシアはどういった決断を下すのか?
そしてエリシアを信じて疑わないカナリアはその時どう行動するのか?

頬を緩めずには読み進められないハートフルなスローライフ。
そんな中で見え隠れする魔女と幼子の過酷な生い立ち。そして未来。

ゆったりと読んで欲しい小説である一方、プロローグからエピローグに至るまでのストーリーも秀逸な作品です!

『魔女と少女の愛した世界』の感想

本作の魅力やおすすめポイントを交えて、僕なりの感想を書いていこうと思います。
気になった方はぜひ読んでみて下さい!

魔女・エリシアの一人称が微笑ましい

エリシアの基本姿勢は「カナリアを売るために仕方なく世話を焼いてやっている」なので、カナリアとのやり取りにぬくもりを感じたり、成長に喜びを抱いたりしてもそれを認めようとはしません。

毎度毎度なにか理由付けするエリシアの一人称には突っ込まずにはいられませんでした。
ツンデレとはまた少し違ったエリシアの胸中を楽しんで頂ければと思います。

少し考えたのち、ゆっくりとカナリアの体を自分のほうに引き寄せてそのまま胸に抱いた。温かい体温が胸から全身に伝わり広がっていくような気がする。
べつに過去を思い出して寂しくなったわけじゃない。今日は少し肌寒いし、抱き枕にちょうどいいと思っただけだ。他意はない。
『魔女と少女の愛した世界』80ページより

幼子・カナリアの無垢な姿

エリシアはカナリアを商品として育てているわけですが、それを知らないカナリアは純真にエリシアを慕っています

汚れを知らないカナリアの言動や行動は、常にエリシアの心に波紋を生ませます。
エリシアの視点を通して描写されるカナリアの姿は愛らしいものばかりなので、ぜひその辺りにも注目して読んで頂きたいです。

「エリシアさまっ、エリシアさまっ」
自分の名前を呼ぶ声に振り返ってみると、私がいないことに気づいたカナリアがあからさまに狼狽え、ぐるぐると周りを見回しながら必死に叫んでいた。
収拾のつかない状況に、私は髪を掻き乱した。

『魔女と少女の愛した世界』140ページより

二人の周りの優しい人たち

エリシアもカナリアもかなりシリアスな過去を抱えており、互いに孤独を抱えています。

そんな中で二人の周りに集まる優しい人たちもこの作品の魅力です。

  • 変態と罵られながら(時には暴力も受けながら)エリシアを気にかけるリオール
  • エリシア相手に物怖じせず接する友人(エリシアは認めないが)の女性
  • エリシアが贔屓にしている菓子屋の店主

といった面々とのやり取りも素晴らしいです。

性格上エリシアは彼らに突っぱねるような態度を取りますが、それでも彼らの態度は変わりません。
この辺りはエリシアの本質的な優しさを理解しているからこそだと思うと、ことさら物語に深みが感じられます。

カナリアと一緒のエリシアの行動は微笑ましいものばかりなので人が集まってくるのも必然かもしれませんね。

プロローグからエピローグへ。
一つの作品として完成度が高い。

本作の魅力はエリシアとカナリアの心温まるやり取りが一番だと思います。

しかしながら一つの作品としての完成度も極めて高く、特にプロローグからエピローグへの繋ぎは秀逸です。

肩肘張らず読める上、読後の満足感も高い作品なので、ぜひご自分の目で確かめてみてくださいね!

書き手視点で感じたこと

僕も小説を書く身ですので、最後に書き手として『魔女と少女の愛した世界』を読んで感じたことを最後にまとめておこうと思います。

バランスの良い構成

本作は全部で250ページです。

前半は登場人物を出しつつ、エリシアとカナリアの微笑ましい生活を描きます。
二人の関係を存分に描いた後、事件が起きるのが全体の6割くらいの位置なので読者の興味を引き続けるには良い頃合いなのかと感じました。

ネタバレは避けますが、後半では前半で描いた要素を生かしつつ、エリシアの苦悩や決断を怒濤の展開で描いているので読者が惹きつけられるのは必然かと思いました。

伏せ字の扱い方が上手い

本作では文章やセリフで「——」を用いて内容を隠す手法が何度か使われています。
隠された「——」が果たして何なのか、綺麗な形で回収されているのも素晴らしいと思いました。

この手法は多用しても読者が覚えていられないと思うので、ここぞというシーンで使うのが良さそうですね。

魔法的な要素の加減はどうか?

本作では「魔法使い」という要素はあまり強く描かれていないように感じました。

「魔法使い」という種族や立ち位置は上手く活用されているものの、エリシアの生活様式はほぼ人間のそれと変わりません。

仮に僕がこういった話を書くなら、もっと生活に根付いた魔法や魔法具などを登場させるかなと思いました。
ただ、本作のように感情的な要素を前面に押し出す場合、魔法要素に凝りすぎても蛇足になるのかなとも思います。

テーマに合わせた世界観の構築は難しいですね。

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おわりに

今回は『魔女と少女の愛した世界』のご紹介と感想でした。

シリアスな要素はちゃんとあった上で、気軽に読めるハートフルな作品だと思います。
エリシアとカナリアの微笑ましいシーンの数々だけでも読む価値があると思いますので、ぜひ一度手に取ってみてください!

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