皆藤黒助『ことのはロジック』あらすじ&感想〜月が綺麗ですねを超える告白〜

夏目漱石が ”I love you” を ”月が綺麗ですね” と訳した逸話は有名ですよね。

皆黒先生の『ことのはロジック』では、これを超える告白を主人公が目指します。
といっても恋愛要素ばかりというわけでなく、むしろストーリーの大半を「言葉にまつわる謎解き」が占めるという意欲作となっております。

謎解きを楽しみつつ、主人公がどんな言葉で ”I love you” を伝えるのかにも期待していて下さい!

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皆藤黒助『ことのはロジック』のあらすじ

ことのはロジック (講談社タイガ)

主人公・肇(はじめ)は、かつて書道の天才少年としてもてはやされていました。

しかし高校生になった肇は書道、延いては言葉に対する熱意の一切を失っています。
特にやりたいこともなく帰宅部として毎日を退屈に過ごしていました。

そんなある日、隣のクラスに転校生がやってきたとの噂が。
興味を引かれて様子を見に行った肇が目にしたのは金髪碧眼の外国人転校生・アキです。

アキに一目惚れした肇は、友人のおっせかいもあってアキと話す機会を得ます。
アキのあまりに上手な日本語に驚く肇。それもそのはず、アキの趣味は「興味を惹かれる日本語の収集」だったのです。

かつて書道の勉強として日本語の勉強をし続けていた肇はアキにとっての絶好の先生となります。
そんな二人の周りでは日本語にまつわる謎が次々と発生

好奇心のまま飛び込んでいくアキに導かれるように、肇の「言葉にまつわる謎解き」の日々が始まりました。

書道や言葉への情熱を失っていた肇も、アキと関わっていくうちに段々と変化していき……。

肇とアキでなければ生まれなかった「月が綺麗ですねを超える告白」にも要注目です!

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『ことのはロジック』の感想

短編集感覚で謎解きを楽しめる

本作では一つの謎を追うのではなく、いくつかの謎を順に解決していきます。

それぞれの話で日本語や言葉に関する知識が披露されるので、知的好奇心も満たしてくれること間違いなしです。

一つだけ例を挙げると……
「彁」←この漢字、みなさんは読めますか?
僕は目にしたことすらなかったのですが、この漢字に関して『ことのはロジック』ならではの解答も成されていますのでぜひご自分の目で確かめてみて下さい。

謎解きを通して、言葉の奥深さや面白さを楽しんで頂ければ幸いです。

ちょっとリアリティには欠けるかな……

謎解きそのものには感心させられるものが多くありましたが、謎が生まれるシチュエーションには多少の無理矢理感があると僕は思いました。

おそらく謎を考えてからストーリーに当てはめているので、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれません。

「そんな文面は普通書かない」など思ってしまうこともしばしば。
みなさんが読む際にはあまり気にしないで純粋に楽しむのがおすすめです。

繰り返しになりますが、謎自体はよく考えられていますし、披露される知識はどれも興味深いものばかりでした。

「月が綺麗ですね」を超える告白

肇はちゃんと答えを出します。

「月が綺麗ですね」を超えられたかはみなさんの判断におまかせしますが、少なくとも肇にしか導き出せない言葉と形で表現されているので楽しみにしていて下さい。

肇とアキだけの、とてもロマンチックな告白でした。

書き手視点で『ことのはロジック』の感想

ここからは自分の勉強も兼ねて、書き手視点での感想を書いていきます。

ネタバレを含む可能性がありますのでご注意ください!

「月が綺麗ですね」を超える告白を!
↑ 「どうなる?」ではなく「何になる?」という目的

小説を書く上で、主人公の目的を明確にするのは大切です。

  • ライバルや敵に打ち勝てるか?
  • 好きな人と結ばれるか?
  • 目的の物を手に入れられるか?

多くの目的は、できるかできないかの二択になりがち。
そうすると、どうしても読者は結末を予想しやすくなるんですよね。(基本的にハッピーエンドの場合が多いですし)

でも『ことのはロジック』最大の目的である『「月が綺麗ですね」を超える告白をする』の場合は、答えが無数にあるのでとても興味を惹かれます。

僕自身、『好きな人と結ばれるか?』という目的には「告白は成功するんだろうな」と予想していましたが、
『どんな言葉で告白するのか?』はまったく予想できなかったので、そのヒントを探しながら読み進めるのが楽しかったです。

明確な目的で読者の興味を惹いて読ませる、ひとつの見本のような作品だと思います。

自分が書くならどう書いたか?

個人的に『ことのはロジック』のラストはかなり気に入りました。

謎解きにスポットを当てた序盤とは変わって、終盤はアキの隠し事に迫る肇の姿が描かれています。
実は前半の謎解きにいくつもの伏線が張られていたというのも見事ですし、アキの隠し事を見抜いた上で、書道家の肇ならではの告白をするという流れも感動的です。

謎解きのロジックもそうですが、伏線の張り方なんかも今の僕では思いつかないようなものばかりでとても勉強になりました。

ただ個人的には、序盤中盤が謎解きに比重を置いていて(もちろんこれも本作の魅力なのですが)、肇とアキが絆を深める要素が少し薄いような気がしました。

もし自分で書くなら肇とアキの個性同士をぶつけるようなシーンをもっと加えたいと感じました。
そうすれば、あの感動的な終盤がさらに映えるのではと思う次第です。

おわりに

考えられた謎解き、そして何より「月が綺麗ですね」を超える告白が素晴らしい作品でした。

書き手視点でも勉強になることが多かったので、今後の執筆に活かしていきたいところです。
特に「主人公の目的設定」に関しては参考にしたいですね。

すてきな作品ですので、ぜひみなさんもお手にとってみて下さい!

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